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クリス「ジーナさんって素晴らしい奥さんだね」
クリス「どうして離婚したの?」
レオン「……俺の話を聞いていなかったのか?」
レオン「結婚生活の終盤は、毎日暴言を吐かれた上に手まで出されたんだぞ」
クリス「それは……」
クリス「壊れたからでしょう?」
レオン「え?」
クリス「元々愛情を向けてくれていた奥さんが憎しみを向けてくるってことは、心が壊れてしまったんでしょう?」
クリス「なに被害者面してるの?奥さんの心を壊したのは、一体誰だと思ってるの?」
レオン「……」
クリス「モデルのキャリアを犠牲にした奥さんに、あのクセの強い両親の面倒をみさせた挙句、子育てまで押しつけたんだ。暴言や手を出されたくらいで済んで良かったよ」
クリス「俺なら刺してた」
レオン「………………」
レオン「ずっと、自分は被害者だと思っていた」
レオン「あんな家に生まれたばかりに好きな相手とも結婚できず、仕事だけに人生を捧げる被害者だと」
レオン「でも……知らぬ間に加害者になっていた」
ジーナ「……」
レオン「弟と再会するまで、本気で君とは良い関係が築けていると思っていた」
レオン「財産を差し出す代わりに家のことは君に任せ、俺は仕事に集中して会社を守る。愛のある結婚ではなかったが、君とは良いパートナー関係を築けていると思っていたんだ」
レオン「だから君が変わってしまった時に、酷く混乱した」
レオン「どうして一方的に俺が責められるのか、君が何に対して不満を抱いているのか……理解できなかった」
レオン「クリスに言われて初めて気付いたよ。俺自身が、他ならぬあの両親そのものになっていたんだと」
レオン「愛情を与えず、結果だけを求める。君にとっての『加害者』になっていたんだと……」
ジーナ「……」
ジーナ「ずっと、あなたのことが憎かった」
ジーナ「離婚を言い渡された日には、この先あなたが死ぬよりも辛い地獄を味わって、苦しみ抜けば良いと思った」
ジーナ「でも、今は違う」
レオン「……」
ジーナ「あなたが幸せになろうと不幸になろうと、どうでも良い。興味がないの」
ジーナ「私には愛してくれる人がいるし、信頼できる友人もいる。人生を賭けても良いと思える天職にも出会えた」
ジーナ「私は今、人生で一番幸せなの。過去を振り返る暇なんてないわ」
レオン「……俺は君の視界にも入らない存在に成り下がったわけだ」
ジーナ「そういうことかしら?」
レオン「まだあの下着モデルと付き合ってるのか?」
ジーナ「そうよ。カイルは……」
ジーナ「……カイルを知ってるの?」
レオン「離婚が成立する前から付き合っているだろう?」
ジーナ「どうしてそれを……」
レオン「Del Sol Valleyは俺の庭だ。どんな情報でも耳に入って来る」
ジーナ「……どうして?」
ジーナ「カイルのことを出せば、財産も親権も私に渡す必要はなかった。どうしてカイルのことを知っていながら黙っていたの?」
レオン「……どうしてだろう」
レオン「自覚はしていなかったが、無意識に君に悪いことをしたとわかっていたのかもしれないな」
ジーナ「……」
レオン「君が俺を憎むのは当然だ。許してもらおうとは思っていない。それでも……」
レオン「ジーナ、俺は君の幸せを願っているよ」
ジーナ「……」
レオン「そろそろ到着する頃だな」
ジーナ「皮肉なものね。完全に終わって、初めてあなたと分かり合えた気がする」
レオン「何だ?」
ジーナ「いいえ。何でもないわ」
ジーナ「行きましょう」
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