意地よりも誇りよりも、大切な宝物ーー
ウィル「落ち着いた?」
バイオレット「……」
ウィル「ローズの件、驚いたね」
バイオレット「……」
ウィル「ローズから何か聞いてる?」
バイオレット「……何も話してくれないわ」
バイオレット「あの子、今まで私に隠し事なんてしたことなかったのに……」
ウィル「バイオレット……」
ガチャ
ウィル「マリオン、ローズはなんて?」
マリオン「ダメ。相手の連絡先も知らなければ、名前も知らないって」
バイオレット「……」
ウィル「ローズも動揺しているだろうね」
マリオン「いいえ、あの子は冷静よ。怖いくらいね」
マリオン「シングルマザーになる覚悟はできてるし、実際に育てていく算段も考えてある」
ウィル「ローズは……平気なの?」
マリオン「妊娠に関してはね。ただ……」
ウィル「ただ?」
マリオン「バイオレット、あんたのことで激しく動揺していたわよ」
バイオレット「……私?」
マリオン「妊娠も子育ても覚悟はできてるけど、あんたに嫌われることだけは耐えられないそうよ」
バイオレット「……隠し事してたクセに、随分勝手ね」
ウィル「お姉ちゃん想いのローズのことだから、何か事情があるんじゃないかな?」
バイオレット「……」
マリオン「どんな事情があるにせよ、今はローズの体を一番に考えないと」
マリオン「バイオレット、言いたいことはたくさんあるだろうけど、あんたがローズを支えるのよ」
ウィル「俺たちもできることは何でも協力するから、とにかくローズの側にいてあげて」
バイオレット「……わかった」
数週間後ーー
バイオレット(生活は元に戻ったものの、あれ以来ローズとはまともに言葉を交わしていない……)
バイオレット(このままじゃダメね。いい加減、ちゃんと話し合わないとーー)
バイオレット「ローズ、ちょっといい?」
ローズ「……何?」
バイオレット「座って」
バイオレット「体調はどう?ちゃんと産婦人科に通ってるの?」
ローズ「……うん。悪阻は落ち着いてきたし、先生も順調だって言ってたから大丈夫」
バイオレット「そう……」
バイオレット「この間は、怒鳴ってごめんなさい」
バイオレット「どうして私があそこまで怒ったのか、あんたにわかる?」
ローズ「……私がバカなことしたから」
バイオレット「そうね。でも、憎くて怒ったわけじゃない。あんたを愛してるから怒ったのよ」
ローズ「……」
バイオレット「ウィルには、私に幸せな家庭を作って欲しいって言ってたらしいわね。私だって同じよ。ローズには愛する人と、幸せな家庭を築いて欲しいと思ってた」
ローズ「私はお姉ちゃんがいてくれれば、それで十分幸せだよ」
バイオレット「……正直、あんたが妊娠したことよりも、隠し事されたことの方がショックだったのよ。どうして何も話してくれなかったの?」
ローズ「お姉ちゃんに……嫌われたくなかったから」
バイオレット「あのね……だからって、隠し通せるわけないでしょう?」
ローズ「ごめんなさい」
バイオレット「何があろうと、私はあんたの味方よ。どんなバカなことしようと、あんたを世界で一番愛してる。だから、もっと信用してよ」
ローズ「……お姉ちゃん」
ローズ「私ね、妊娠したことは本当に嬉しかったの。でも……」
ローズ「この子をお父さんのいない子にしちゃったことは、後悔してる」
バイオレット「確かにお父さんはいないけど……この子には、伯母さんがいるじゃない」
バイオレット「覚悟しなさい。お父さんなんていなくても、伯母さんがウザいくらい愛してあげるから」
ローズ「ウザいくらい?」
バイオレット「私だけじゃない。この子の周りには、愛してくれる人がたくさんいる」
バイオレット「完璧な家庭は用意してあげられないけど、愛情の溢れる家庭を作りましょう」
ローズ「……うん」
バイオレット「あんたもあんたの子も、私にとっては大切な宝物だから」
ローズ「お姉ちゃん……ありがとう」
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話したくても話せない事情があるようです。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m