過去を精算するには、それ相応の代償が必要であるーー
ウィル「それで、答えは?」
バイオレット「取引に応じるわ」
ウィル「それは良かった」
バイオレット「元々、組織に思い入れはないから未練もないわ。その代わり、大した情報は提供できないかもしれないけど……」
ウィル「上層部の構成や過去に組織が関わった犯罪について、説明できる?」
バイオレット「えぇ」
ウィル「十分だ」
バイオレット「……」
バイオレット「司法取引に応じるのは構わないけど、一つお願いがあるの」
ウィル「何?」
バイオレット「組織の情報を売ったことがバレれば、報復されるかもしれない」
ウィル「大丈夫。君のことは、警察が保護するから……」
バイオレット「私じゃない。ローズとカイルのことが心配なのよ」
ウィル「……組織はローズとカイルのことも知っているの?」
バイオレット「……私たちは、互いの顔も名前も知らない。プライベートな情報に関しては、一切話さない決まりなの」
バイオレット「家族について話したことはないけど、組織が把握しているか否かはわからない」
ウィル「家族も身辺警護の対象になるから、大丈夫だよ」
バイオレット「……本当に守り切れるの?」
ウィル「ローズは有名人だ」
バイオレット「……だから?」
ウィル「君の組織は、目立つ行動を嫌う。有名人であるローズに手を出せば、警察だけでなく世間の注目を浴びることになるだろう」
ウィル「そんなリスクを冒してまで、ローズを報復の対象にするかな?」
バイオレット「……」
ウィル「心配なのは、君自身だ」
バイオレット「ローズやカイルに危険がないなら、構わないわ」
ウィル「俺は構うよ」
バイオレット「ウィル……」
ウィル「一つ提案があるんだ」
バイオレット「提案?」
ウィル「警察との取引が終わったら、身を隠してほしい」
ウィル「君が情報を提供してくれれば、捜査は進展するだろう。いずれ警察が組織を追い詰めるまで、安全な場所に避難するんだ」
バイオレット「でも……身を隠すって、どこに?」
ウィル「俺の高校の先輩が、南の島に移住したんだ。人が少なくて住みやすい島らしい。熱りが覚めるまでは、先輩を頼ろうと思う」
バイオレット「……あなたも一緒なの?」
ウィル「あぁ」
ウィル「俺は、退職することにした」
バイオレット「どうして?私と交渉したんだから、出世のチャンスでしょう?」
ウィル「……」
ウィル「君の正体を知っていたのに、ずっと黙っていたんだ。もうこのバッジをつける資格はないよ」
バイオレット「でも……」
ウィル「いいんだ。君と一緒に、俺も罪を償わないと」
バイオレット「ウィル……」
ウィル「さてと、終わらせよう。全て」
バイオレット「……えぇ」
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南の島に逃避行なんて、羨ましい。
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