望むものが大きいほどに、その代償も大きくなるーー
マリオン「……バイオレット?」
マリオン「こんなところで何してるのよ?」
バイオレット「仕事が終わって帰って来たんだけど、まだローズが寝ている時間だから……」
マリオン「起こさないように時間つぶしているって?」
マリオン「早朝とはいえ、女の子がこんなところに一人でいたら危ないじゃない」
バイオレット「平気よ。放っておいて」
マリオン「はぁ……うちにいらっしゃい」
マリオン「あんた最近、成人したんでしょう?
私が美味しいお酒の味を教えてあげる」
バイオレット「家にバーカウンターがあるのね」
マリオン「練習用よ」
マリオン「どう?美味しい」
バイオレット「多分……」
マリオン「まだまだお子様ね」
バイオレット「……。
都会の人って、もっとドライだと思ってた」
マリオン「田舎も都会もないわよ。人それぞれでしょ」
バイオレット「ウィルもあなたも、どうして親切にしてくれるのか不思議で……」
マリオン「あぁ。私たちは身寄りがないから、お互い助け合わなきゃって意識が強いのかもしれないわね」
バイオレット「そうなの?」
マリオン「ウィルは確か、親兄弟がいなかったはずよ」
マリオン「詳しいことは本人に聞かないとわからないけど……。
あの子、他人には色々聞くクセに自分のことはあまり話さないから」
バイオレット「あなたは?」
マリオン「私の場合は、いることはいるけど縁を切ったって言った方が正しいわね」
バイオレット「あぁ……切られたの?」
マリオン「私が切ったのよ!」
マリオン「都会は孤立している人が多い上に、身近な場所に様々な危険が潜んでいる。
ある意味、田舎よりも助け合いが必要かもしれないわね」
マリオン「だからこそ、あんたを放っておけないのよ」
バイオレット「……私?」
マリオン「バイオレット、よく聞きなさい」
マリオン「この街では、その気になれば大概のものは手に入る。
一夜にして、人生が変わるような出来事もめずらしくはない」
マリオン「でもその一方で、失うものも大きいーー」
マリオン「手に入れたものが大きければ大きいほど、後々とんでもない代償を支払うことになるわ」
バイオレット「……何が言いたいの?」
マリオン「お金や権力なんて、多くは要らないはずよ。
あなたにはローズっていう可愛い妹がいるんだから、それで十分じゃない」
マリオン「あまり面倒なことに首突っ込むんじゃないわよ」
バイオレット「……」
バイオレット「ローズがそろそろ起きる頃だし、帰るわ。
……ご馳走様」
マリオン「バイオレット……」
マリオン「私のようになってはダメよーー」
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マリーちゃんは謎多き女。
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