さりげなく伝えた方が、心に響くこともあるーー
バイオレット「……」
ウィル「……」
バイオレット(どうしてこんなことに……)
ウィル「普段たくさん話しているのに、改まると緊張するね」
バイオレット「……そうね」
バイオレット(ローズが何か企んでいるのはわかっていたけど、まさかデートさせられるなんて……)
バイオレット(相手は刑事よ?組織の人間に見られたら、ただじゃ済まない……)
ウィル「まぁ、せっかくだからゆっくり過ごそうか」
バイオレット「ゆっくりね……」
バイオレット「そうだ、静かな場所。静かな場所に行きたいわ」
ウィル「静かな場所?」
バイオレット「そう、室内で人が少ない場所」
ウィル「室内で人が少ない場所か……」
ウィル「図書館なんて学生の頃以来だな」
バイオレット「……」
バイオレット(ここなら、知り合いに会う可能性は低いわね……)
ウィル「バイオレットは料理が好きなの?」
バイオレット「え?」
ウィル「レシピ本を見ているから。家でもよく料理してるよね」
バイオレット「あれは……ローズがリクエストしてくるから、仕方なく作っているだけよ」
ウィル「そうなんだ。料理しているバイオレットは、楽しそうに見えるけどな」
バイオレット「……」
バイオレット「あなたは何の本を読んでいたの?」
ウィル「俺?」
ウィル「園芸本」
バイオレット「園芸本?」
ウィル「都会育ちだからね。いつか田舎に移り住んで、家庭菜園をするのが夢なんだ」
バイオレット「今から老後のことを考えているの?」
ウィル「バイオレットは料理が好きなら、シェフを目指せば良いのに」
バイオレット「……シェフじゃ稼げないもの」
バイオレット「ローズにお金の心配はさせたくないの」
ウィル「……」
ウィル「君たち姉妹は不思議だな」
ウィル「ローズといると君の話ばかりで、君といるとローズの話ばかり出てくる」
バイオレット「そんなこと……」
ウィル「そうだよ。この間だって、ローズは君のことを心配していたよ」
ウィル「君には好きな人と一緒になって、幸せな家庭を築いて欲しいんだって」
バイオレット「あの子、そんなことを……?」
バイオレット「私はあの子の方が心配よ。
いつも人の心配ばかりで、自分のことには無頓着で無鉄砲なんだから……」
ウィル「ローズは意外とたくましいから大丈夫。
仕事だって積極的に研究して、インフルエンサーとして立派に活躍しているし」
バイオレット「そうだけど……」
ウィル「あの子は案外、大物になる気がするな」
バイオレット「そうかしら?」
ウィル「うん。観察力に優れているし、洞察力も見事だ」
バイオレット「観察力に洞察力?」
バイオレット「私にはわからないけど……」
ウィル「俺にはわかったよ」
ウィル「実際、俺が君のこと好きだってバレちゃった」
バイオレット「……え?」
ウィル「そうだ、夕食は新しくできたレストランに行ってみようか」
ウィル「この街では珍しい、本格的な和食のお店だって」
バイオレット「そう……」
バイオレット「……」
バイオレット(聞き間違い…じゃないわよね……)
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相手がケヴィンなら、確実にスルーされてた。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m