ピンチの時にこそチャンスを得る。それが、一流のビジネスマンだーー
ライアン「大学以来だから、三年ぶりっすね」
クリス「そうだな。元気にしてたか?」
ライアン「もちろん」
クリス「大学を卒業したお前が、南の島で暮らしているとは思わなかった」
ライアン「俺には、都会のエリートビジネスマンなんて向いてませんから。
ライフガードやダイビングで小銭稼ぐのが精一杯っす」
クリス「それにしても、よくあんな広大な土地を手に入れられたな」
ライアン「あぁ、使い道のない土地らしくて、地元のおっさんが安く譲ってくれたんすよ」
クリス「実は、しばらくお前の家で世話になろうと思っていたんだが……。
今どこで暮らしているんだ?」
ライアン「俺っすか?」
ライアン「俺には、決まった家も宿もないっすよ」
クリス「え?」
ライアン「この島は、貴重な生物がたくさん生息している自然保護区なんです」
ライアン「人も物も少ないけど、国の管理下にあるお陰で公共施設は充実してます」
ライアン「トイレやシャワーも無料で使用できるから、家なんてなくてもどうにでもなるんすよ」
ライアン「この島において、金や権力なんて全く無意味っす。
物が欲しければ物々交換、家が欲しければ自分で建てる。
それが、この島のルールですよ」
クリス「そうなのか……」
ライアン「それにしても……ククッ……」
クリス「……なんだよ?」
ライアン「お坊ちゃん育ちの先輩が、よく決断しましたね」
クリス「うるせーな。俺だってやる時はやるんだよ……悪いか?」
ライアン「いえ……良いと思いますよ」
ライアン「生活は厳しいけど、人は温かい。
この島は、どんな人間でも受け入れてくれます」
ライアン「相手の過去なんて関係ない。
この島に根を下ろした人間は、みんな家族なんっすよ」
ライアン「先輩、歓迎しますよ」
ライアン「改めて、Sulaniへようこそ」
クリス「……ありがとう」
クリス「とりあえず生きていく方法は理解したが、やっていけるかな……」
ライアン「大丈夫っすよ。……大丈夫。
俺の先輩は、どんな逆境でもへこたれない男っすから」
クリス「……そうかよ」
ライアン「ただいま戻りましたー!
……って、先輩。何してんすか?」
クリス「お前、昨日言ってただろ」
「物が欲しければ物々交換、家が欲しければ自分で建てるーー」
クリス「今朝、この島でコストを掛けずにどれだけ収益を上げられるか、実験してみたんだ。
結果、貝殻を拾ったり釣りをするだけでも、その日食べる分の収益を上げることができた」
クリス「だが、更に収益を上げたいのなら、プラスアルファが必要だ。
需要は高いが、供給が少ないものを用意しなければならない。
そこで、農業を始めることにしたんだ」
クリス「この島には、独特で魅力的な作物がたくさんある。
だが反対に、島外で当たり前に手に入るような作物は少ない。
ここにない作物を育てれば独占販売できるし、島民にも喜ばれるだろう。
屋台で相談したら、家庭菜園の道具を分けてくれたよ。
この島の人は、本当に温かいな」
クリス「この島の気候や土質で何が作れるか分からないが……。
リスクなんてないんだ。とりあえず、挑戦してみるよ」
ライアン「……俺が出掛けてるたった三時間のうちに、どんだけ頑張ってんすか」
クリス「俺はな、ライアン」
クリス「何もかもを捨てて、この島に来たんだ。
その日暮らしも悪くはないが、やっぱりきちんとした家が欲しい。
新たな人生の基盤となるような、立派な家が」
クリス「ここに豪邸を建ててやる。島で一番の、立派な豪邸をな」
ライアン「……この島でこんなに熱く夢語る人、初めて見ました」
「俺の先輩、マジパネェ……」
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逆境の中でこそ輝ける人が、本物。
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