どこまで責任を負うかは、その人次第であるーー
クリス「……」
クリス「今日もいないか……」
ライアン「先輩、またビーチに行ってたんすか?」
クリス「あぁ、今日もいなかったよ……」
リタ「ルナのお母さんのこと?」
クリス「そう。毎日ビーチで探してるんだけど、見つからなくて⋯⋯」
リタ「考え直して戻って来てくれるといいわね」
リタ「それにしても、まさかライアンに子供の世話ができるとは思わなかったわ」
クリス「実家では、よく年の離れた弟の面倒を見ていたらしい。意外な特技があって助かったよ」
リタ「どんな人間でも、一つくらいは得意なことがあるものね」
ハワード「だいぶ顔色が良くなりましたね。健康状態にも問題はありませんよ」
クリス「みんなが協力してくれたお陰です」
リタ「ルナを預かって、もう1ヶ月でしょう?いい加減、養護施設に入れるか養子にするか、決めた方が良いんじゃない?」
クリス「……」
ライアン「先輩、俺はどっちでも構いませんよ」
クリス「ありがとう」
(警察に捜索願を出しても、成果はない。ルナの身元も調べてもらったけど、戸籍すら存在しなかった……)
クリス(このままじゃ成長しても、学校に通うこともできない……)
クリス(お母さんが迎えに来る可能性を捨てきれない以上、養護施設に入れるのも気が引けるし……やっぱり養子にするしかないな)
ハワード「クリスさんが引き取ることを考えていないのであれば、私が引き取りますよ」
クリス「先生……?」
ハワード「人魚の子供なんて、そうそうお目にかかれるものではないですからね。個人的には、ルナちゃんを研究してみたいんです。もちろん、人間の子であったとしても、責任を持って面倒は見ますよ」
クリス「……研究?」
ライアン「先生、解剖するつもりじゃないでしょうね……?」
ハワード「まさか!観察して成長記録をつけるだけですよ」
リタ「人魚だったら、学会に発表するとか?」
クリス「え?」
クリス「……ダメですよ!そんなことしたら、ルナはもちろん、この島だって好機の目に晒されることになる」
ハワード「……」
ハワード「学会には発表しませんよ。確かに、時々宇宙人だのヴァンパイアだの、オカルト系の発表をする医師や学者もいますが……」
ハワード「誰からも相手にされません。例え研究結果が本物であったとしても、その内容を信じる人なんていませんよ」
ハワード「私が研究したいのは、あくまで自己満足のためです」
クリス「……」
クリス「ルナは……俺が養子にします」
ライアン「先輩……」
クリス「先生のことを疑っているわけではないんです。ただ、ルナは……」
ルナの母親『あなた、親切な人ですね』
ルナの母親『どうかこの子をお願いします』
ルナの母親『ルナ、愛してるわーー』
クリス「……この子のお母さんは、俺を信用して託してくれました。
俺が責任を持って、面倒を見たいんです」
ハワード「クリスさん……」
ライアン「まったく、変なところ責任感強いんだから」
リタ「クリスらしいわね」
クリス「明日にでも、隣の島で養子の手続きをします」
ハワード「……わかりました。親権はクリスさんに譲りますが、時々研究はさせてくださいね。それで我慢します」
ライアン「安心してください、先輩。ルナが解剖されないように、先生は俺が見張っておきますから」
ハワード「ライアンさん……」
クリス「ルナ、ママが見つかるその日まで、俺たちと一緒に暮らそうな」
リタ「お姉ちゃんもちゃんと面倒みてあげるから、安心してね」
ルナ「……」
ルナ「うん!」
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都会のエリートビジネスマン→南の島の新米園芸家→子持ちのベテラン園芸家。
……クリスの経歴が謎過ぎる。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m