賢いフリをするよりも、無能なフリをする方が難しいーー
クリス「こんなところにいたのか」
ライアン「先輩、仕事終わったんすか?」
クリス「あぁ。お前は何してるんだ?」
ライアン「海を見てました」
クリス「……」
クリス「ライアン、お前海洋生物学者を目指すのはやめたのか?」
ライアン「やめてないっすよ。毎日ちゃんと働いてるし……」
クリス「そうじゃなくて、情熱の問題だよ」
ライアン「……情熱っすか?」
ライアン「海は好きだし生物にも興味はあるんですけど……正直、研究が肌に合わなくて」
ライアン「最近思ったんですよ。リタと結婚できたし、生物研究でもやりたいことはやった」
ライアン「後は、エイデンの故郷であるこの島の自然が、変わらずに存在してくれればそれで良いって」
クリス「……」
クリス「それなら、環境マネージャーを目指したらどうだ?」
ライアン「環境マネージャー?」
クリス「そうだ。名産品が広まって、年々Sulaniの知名度が上がっている。観光客が増えたことは有り難いが……同時に環境破壊の問題も出てきた」
クリス「この島には近い将来、環境を保護する人材が必要となるだろう」
クリス「ライアン、お前はライフガードやダイバーをしていたから観光事情に詳しい。どんな相手でも物怖じすることなく話せるから、マナー違反者に指導もできるだろう」
クリス「いずれ環境保護のために助成金が必要となった時にも、企業やセレブに積極的に掛け合えるはずだ」
ライアン「先輩。気持ちは有り難いっすけど、俺には無理……」
クリス「いい加減、馬鹿なフリはやめろよ」
ライアン「……」
クリス「本当は俺よりずっと賢いクセに、いつだって馬鹿なフリして逃げてる」
クリス「俺が気付いていないとでも思ったか?」
クリス「お前ももう、人の親なんだ。息子には、父親としてカッコいいところを見せてやれよ」
ライアン「カッコいいところ……か」
ライアン「環境マネージャーって、どんなスキルが必要なんですかね?」
クリス「その点については、お前やリタの方が詳しいだろう?」
クリス「確か、俺がいた経済学部に環境マネージャーを目指す奴がいたな」
ライアン「経済学部に?」
ライアン「先輩と同じ学部にしておけば良かった……」
クリス「大丈夫。お前、地頭は良いんだ。この島への恩返しだと思ってやってみろ」
ライアン「……そうっすね」
ライアン「俺、エイデンにカッコいいところ見せますよ」
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やってみてダメなら、別の道を探せば良い
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m