情熱を注げる何かに出会えたら、それ以上の幸運はないーー
クリス「う〜ん……」
ライアン「先輩は悩まない日ってないんすか?」
クリス「お前と違って、毎日頭を使っているからな」
ライアン「今度は何が問題なんすか?」
クリス「一通り作物を作ることはできたけど、味に納得がいかないんだ」
ライアン「素人が作物育て上げただけでも、十分だと思いますけどね」
クリス「素人か……やっぱり一度、プロの指導を受けるべきだよな」
クリス「よし、決めた!園芸家に弟子入りすることにする」
ライアン「……この島に園芸家なんているんすか?」
クリス「あぁ。この間、リタが紹介してくれたんだ」
クリス「俺が島内にはない作物を育てたいと言ったら、興味を持ってくれてな」
クリス「勉強ついでに自分の畑を手伝わないかって、提案されたんだ」
ライアン「……俺の知らないところで、リタと随分仲良くしてるんすね」
クリス「突っかかって来るなよ。俺とリタはただの友達なんだから」
ライアン「リタは、都会と頭の良い男が好きなんすよ!」
クリス「お前だって、都会出身だし大学出だろう?」
ライアン「……あれ?そういえば俺、大学出てましたっけ」
クリス「お前がリタから好かれない理由がよくわかるな」
ライアン「そっか……そうっすよ、先輩。俺、『海洋生物学者』になります!」
クリス「……は?」
ライアン「そういえば俺、大学では生物学部だったんすよ」
クリス「……だから?」
ライアン「海洋生物学者になれば、リタと一緒に働けるし、俺を見直してもらえるしで一石二鳥っす」
クリス「お前……そんな不純な動機で学者を目指すつもりか?」
ライアン「まぁ、きっかけは不純かもしれないけど……」
ライアン「正直、先輩やリタが羨ましかったんすよ」
クリス「羨ましい?」
ライアン「俺も、真剣に取り組める何かに出会いたいな……なんて」
ライアン「俺、この島の海が好きだから、海洋生物学者なら頑張れそうかなって」
クリス「ライアン……」
クリス「まぁ……動機は褒められたものじゃないが……」
クリス「何事にもいい加減なお前が、珍しくやる気になったんだ。
とりあえず挑戦してみたら良いんじゃないか?」
クリス「応援するよ」
ライアン「うっす」
クリス「……そういえば、どうして生物学部を選んだんだ?」
ライアン「あぁ、それは……」
ライアン「カエルの解剖が得意だったから」
クリス「……」
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クリスは多分、経済学部。
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