親に見捨てられ、妻に先立たれた俺に、一体誰が手を差し伸べてくれるだろうーー
ケヴィン「セシル、本当に久しぶりだな。元気にしてたか?」
セシル「まぁな」
ケヴィン「もう大学は卒業したのか?」
セシル「あぁ」
セシル「実は、在学中に書いた曲が当たってな。
本格的に作曲家として活動することにした」
ケヴィン「そうか……長年の夢が叶って良かったな」
セシル「実は……。
都会よりも郊外で仕事がしたくて、この街に家を買ったんだ」
ケヴィン「この街に?」
セシル「提案なんだが、よかったら一緒に暮らさないか?」
ケヴィン「え?」
ケヴィン「ダメだ、ダメだ!お前は子育ての大変さがわかってない」
ケヴィン「せっかく夢が叶ったのに、俺達がいたら創作活動に集中できない。
気持ちは有り難いけど、もっと現実を見ろ」
セシル「はぁ……。
現実を見るのはお前だ、バカ」
ケヴィン「え?」
セシル「お前には、この家の状況が見えていないのか!?」
セシル「見ろ!これが子供を育てるのに最適な環境だっていえるのか?」
ケヴィン「これは、その……」
セシル「俺なら、子育ても生活もある程度支援できる。
お前だって、画家になる夢を諦めたくはないだろう?」
ケヴィン「それはそうだけど、お前の世話になるわけには……」
ガタッ
セシル「いいか、これはお前のためだけじゃない。
生前世話になったリリィと、その子供達のためでもある」
ケヴィン「セシル…でも……」
セシル「おい、ケヴィン・グリーン」
「家族の未来とてめぇの下らないプライド、どっちが大事かよく考えろ」
セシル「とにかく、俺は伝えることは伝えたからな」
セシル「後はお前の好きにしろ」
『画家になる夢を諦めたくはないだろう?』
ケヴィン(あいつ……。あの約束、まだ覚えていたのか)
ケヴィン「セシル、それってお前が作った曲なのか?」
セシル「……あぁ」
ケヴィン「すごいな!将来は作曲家になれよ」
セシル「……無理だよ」
ケビン「絶対なれるって!」
セシル「そういうお前は、何になりたいんだよ?」
ケヴィン「俺か?俺は……」
ケヴィン「絵を描くのが好きだから、画家かな?」
セシル「じゃあ、その夢を叶えろよ。
お前が画家を目指すっていうなら、応援してやる」
ケヴィン「じゃあこうしようぜ!
俺は画家を目指すから、セシルは作曲家を目指せ」
ケヴィン「お互いの夢を叶えるために、どんなことも一緒に乗り越える。
いいな?男の約束だ」
セシル「……あぁ」
(家族の幸せには、犠牲がつきものだと思っていた)
「まだ夢を諦めなくてもいいのかな……?」
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辛い時に手を差し伸べてくれるのが、本当の友達。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いします。