現在は、過去からのプレゼントであるーー
ジェシー「セシル!おい、セシル」
ジェシー「いつまで引きこもっているつもりだ?起きろ」
セシル「……」
セシル「……内心、喜んでるクセに」
ジェシー「は?」
セシル「お前、ずっと俺がフラれること望んでいたもんな」
ジェシー「あのな……」
ジェシー「確かに、フラれて俺のものになれば良いとは思っていたけど……別にお前が傷つくことを望んでいたわけじゃない」
ジェシー「好きなもの作ってやるから、さっさと起きろよ」
セシル「……」
セシル「……卵が食べたかった」
ジェシー「いい加減、叩くぞ?」
ジェシー「辛いのはわかるけど、終わったことを引きずっていても仕方ない。それより、これからのことを考えようぜ」
セシル「これからのこと?」
ジェシー「そうだ。お前、これからどうするつもりだ?」
セシル「……ここに住む」
ジェシー「それで?」
セシル「……それだけ」
ジェシー「俺は?」
セシル「?……お前もここに住んでいて良いぞ」
ジェシー「俺の家なんだから、当たり前だろう」
ジェシー「そうじゃなくて、俺との『関係』の話だよ」
セシル「……」
ジェシー「俺はまだ恋人(仮)のままか?」
セシル「お前って肩書き気にしないとか言うけど、割と気にしてるよな」
ジェシー「誤魔化すなよ」
セシル「じゃあ……恋人(正式)で」
ジェシー「嫌だ」
セシル「そうかよ……お前まで俺をフルのかよ」
ジェシー「違う」
ジェシー「俺はもう何年も恋人(仮)に甘んじて来たんだぞ?もっと昇格させて欲しい」
セシル「昇格?」
ジェシー「そう。『婚約者』くらいにしてくれないと、納得できない」
セシル「それって、プロポーズか?……色気ねぇな」
ジェシー「お前に言われたくねぇよ」
ジェシー「正式じゃない。ただ、真剣に考えておいて欲しいんだ」
セシル「……わかった」
セシル「結婚……か」
そういえば、ジェシーと出会ってもう十年以上経つんだな……。
初めて出会ったのは、大学の入学式の日だったーー
式をサボってピアノを弾いていたら、どこからともなくあいつが現れた。
ジェシー『それ、なんて曲?』
セシル『……未定だ』
ジェシー『え?』
セシル『作ったばかりだから、曲名なんてない』
ジェシー『今の曲、お前が作ったのか?即興で?』
セシル『……悪いかよ?』
ジェシー『なぁ、俺と組まないか?』
セシル『組む?』
ジェシー『俺はジェシー・カーキ。作詞家を目指してるんだ。お前は?』
セシル『……セシル。セシル・ブラウン』
ジェシー『セシルか。よろしく』
一緒に曲を作るようになって、大学在学中に売り込んだ曲が当たり、俺たちは音楽で食べて行くことになった。
俺が音楽を生業にできたのは、ジェシーのお陰だーー
あの日から十数年……。
俺たちは友人であり、パートナーであり、恋人になった。
セシル「……そうか」
セシル「俺の幸せは、いつだってジェシーが与えてくれていたんだな……」
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ようやくジェシーの有り難みに気付くセシル。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m