価値観が一致する人こそ、運命の人であるーー
コンコン
ガチャ
ケヴィン「よう、ジェシー・カーキ」
ジェシー「……」
ジェシー「あんた、人の話聞いてなかったのか?」
ケヴィン「聞いてはいたけど、従うとは言ってない」
ジェシー「……」
ジェシー「どうしてここに?」
ケヴィン「絵を届けに来たんだ」
ジェシー「これはこれは、有名な画家の先生が自ら絵を配達してくれるとは」
ジェシー「あんたが配送料も払えないほど貧乏だとは、知らなかった」
ケヴィン「有名な画家の先生が、わざわざ届けてやったんだ。トイレ以外の場所に飾れよ」
ジェシー「一応聞いてはおくけど、従うかはわからない」
ケヴィン「……」
ケヴィン「セシルは?」
ジェシー「シャワー浴びてる」
ケヴィン「そうか……ちょうど良かった」
ジェシー「セシルに会いに来たんじゃないのか?」
ケヴィン「お前に会いに来たんだ」
ジェシー「俺に?本当に絵を届けに来たのかよ」
ジェシー「そもそも……こんなに絵を買った覚えはないぞ」
ケヴィン「婚約祝い」
ジェシー「……え?」
セシル「ジェシー?誰か来て……」
セシル(ケヴィン?)
セシル(どうしてここに……?)
ケヴィン「お前の言う通りだよ」
ケヴィン「俺じゃ、セシルを傷つけるばかりで幸せにできない。だから、お前にセシルを幸せにしてほしい」
ジェシー「言われなくても、そうするつもりだ」
ケヴィン「俺は完全に身を引く。ただ、一つお願いがある」
ジェシー「……何だよ?」
ケヴィン「二人が許してくれるなら、セシルとまた友達に戻りたいんだ」
ケヴィン「誰が一番だとか、誰より大事だとか、そんな問題じゃない」
ケヴィン「あいつは……セシルは、俺の人生そのものなんだ」
ケヴィン「どんなに時間がかかっても良い。またいつか、笑って話せる日が来ることを願っている。それだけだ」
ジェシー「……気が向いたら伝えておく」
ケヴィン「ありがとう」
ジェシー「この絵、本当に良いのか?」
ケヴィン「あぁ」
ケヴィン「婚約おめでとう。セシルを頼む」
ジェシー「………………あぁ」
セシル(そうか……)
ケヴィン『セシル、お母さんを亡くして大変だったな』
セシル『……』
ケヴィン『髪の毛、切ったのか?』
セシル『切られたんだ』
ケヴィン『……』
ケヴィン『新しい家はどうだ?お父さんの家、すごいお金持ちなんだろう?』
セシル『あの家……好きじゃない』
ケヴィン『どうして?』
セシル『あの家には、自分の居場所がないんだ』
セシル『毎日、何のために生きているのかわからなくなる……』
ケヴィン『……』
ケヴィン『セシル、お前は俺の親友だ』
セシル『……親友?』
ケヴィン『そうだ。お前の居場所は、あの家じゃない。俺の隣だ』
ケヴィン『お前が生きている意味は、俺の親友でいるためだ』
ケヴィン『俺は、お前の親友でいるために生きる。俺たちは、お互いのために生きるんだ』
セシル『……なんだそれ』
ケヴィン『辛くなったら、俺のところに来れば良い。俺がいる限り、セシルは絶対に一人にはならない』
セシル『……わかった』
セシル(俺がケヴィンから離れられなかったのは、あいつこそが俺の存在意義そのものだったからなのか……)
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ゴールド家の人は、盗み聞きが上手。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m