完全よりも不完全な方が、愛着を持てる。
↓Season 1のまとめは、こちら。
↓Season 2の第1話は、こちら。
サマンサ「リリーは優秀ですね」
サマンサ「絵の才能もあるし、子供たちへの教え方も上手です」
ケヴィン「そうだな」
サマンサ「大学卒業後は、先生の下で働きたいと言っていましたよ」
ケヴィン「……俺の下で?」
サマンサ「はい。働きながら絵の勉強がしたいと」
サマンサ「元々先生のファンでしたが、実際に話してみて人柄にも惹かれたそうです」
ケヴィン「……」
ケヴィン「実は、美術館から絵画教室を定期的に開催してほしいとお願いされているんだ」
ケヴィン「この美術館のウリにして、人を集めたいらしい」
サマンサ「それは素晴らしい提案ですね」
ケヴィン「まだ決定ではないけど……リリーがサポートとして加わってくれると助かるな」
サマンサ「えぇ、あの子は絶対にうちのチームに入れるべきです」
ケヴィン「……」
ケヴィン「何か企んでる顔をしているな」
サマンサ「企むなんて、とんでもない」
ケヴィン「言っておくけど、俺のチームでは職場恋愛禁止だ」
サマンサ「……え?そうなんですか?」
ケヴィン「冗談だよ」
サマンサ「先生……」
セシル「……暇だ」
セシル「新規事業は上手くいっているし、情報漏洩問題も解決したし、マリアのつわりも落ち着いたし……」
セシル「会長職も3年目にもなると飽きるな。そろそろ引退するか」
クリス「引退って……後継者もいないのに何言ってるんですか」
セシル「ジュリアンがいるだろう?」
クリス「ジュリアンさんは『兄さんが死なない限り継ぐ気はない』って言っていましたよ」
セシル「この世から引退しないと無理ってことか」
クリス「縁起でもないこと言わないでくださいよ」
セシル「そういえばお前、いつまでうちにいる気だ?そろそろビクトリアと暮らしたらどうだ?」
クリス「いや……元々ビクトリアさんと暮らしていたのに、会長が無理やりゴールド家に呼んだんでしょうが」
セシル「そうだったか?」
クリス「本当、自分に都合の悪いことはすぐに忘れますね」
セシル「仕事も落ち着いたことだし、ビクトリアの家に引っ越しても良いぞ」
クリス「え?でも……」
コンコン
ビクトリア「失礼します」
セシル「ビクトリア、いいところに来たな」
ビクトリア「何です?」
セシル「クリスにお前と暮らすよう提案していたんだ」
ビクトリア「え?」
ビクトリア「ずいぶん急なお話ですね……」
セシル「お前にとっても嬉しい提案だろう?」
ビクトリア「えぇ……それはもちろん、そうですけど……」
セシル「何か問題でも?」
ビクトリア「問題というわけではないのですが……その…別に一緒に暮らさなくても良いかな……って」
セシル「なんだ、クリスとは一緒に暮らしたくないのか?」
ビクトリア「そういうわけでは……」
クリス「……」
ビクトリア「とにかく、この件については少し考えさせていただきます」
セシル「考えるって、お前……」
ビクトリア「失礼します」
クリス「ビクトリアさん」
セシル「……」
セシル「あいつ、何しに来たんだ?」
クリス「ビクトリアさん」
ビクトリア「クリス……」
クリス「すみません、急に一緒に暮らすなんて提案して」
ビクトリア「ごめんなさい、クリス。私も驚いてしまって……」
クリス「ビクトリアさん。その……俺と暮らすのが嫌なら、ハッキリ言って頂いても……」
ビクトリア「そうじゃないの」
ビクトリア「あなたと暮らせたら嬉しいわよ。ただ……」
クリス「ただ?」
ビクトリア「がっかりさせてしまう気がして」
クリス「がっかり?どういうことですか?」
ビクトリア「……」
ビクトリア「前回は短期間だから誤魔化せたけど、実は私……」
ビクトリア「料理ができないの」
クリス「……え?」
ビクトリア「料理だけじゃなくて、掃除も片付けも、家事という家事が苦手なのよ」
クリス「でも……家は片付いているし、デートの時は毎回ご馳走を作ってくれるじゃないですか」
ビクトリア「全部メイドさんにお願いしたのよ」
クリス「……そうだったんですか」
ビクトリア「ね?がっかりしたでしょう?」
クリス「そんなことありませんよ」
クリス「家事は苦手でも、ビクトリアさんは誰よりも仕事ができるじゃないですか」
クリス「少しくらい弱点があった方が、人間味があって俺は好きです」
ビクトリア「……好き?」
クリス「大丈夫ですよ。俺、料理は得意ですから」
クリス「家事なんて、できる方がやれば良いんです。別にビクトリアさんがプレッシャーに思うことなんてありません」
ビクトリア「……本当に?」
クリス「えぇ」
クリス「可愛らしい一面が見れて、がっかりどころか惚れ直しました」
ビクトリア「クリス……」
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ビクトリアの自宅は、メイドサービス付きの物件です。
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