大きな決断には、大きな代償が求められる。
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リック「ヴァンパイアが人間になる薬?」
ジュリアン「ウィルに頼んでいたものが、ようやく完成したんだ」
リック「……それで?」
リック「俺に見せて、どうしようっていうんですか?」
ジュリアン「護衛係を何人か貸してほしい」
リック「護衛係を?」
ジュリアン「ウィルを疑うわけじゃないけど……この薬の安全性がわからないから、護衛係で実験しようと思って」
リック「ちょっと待ってください。『実験』って何ですか?」
ジュリアン「だから、実際に飲ませて安全性を確かめるんだよ」
リック「ダメです。俺の部下に怪しげなものを飲ませないでください」
リック「だいたい、どうして護衛係なんですか?」
ジュリアン「普段から鍛えてるんだから、簡単には死なないでしょう?撃たれても刺されても、しぶとく生きてる」
リック「俺たちをゴキブリみたいに言わないでください」
リック「そもそも、護衛係にヴァンパイアなんていません。実験なんて無理ですよ」
ジュリアン「大丈夫。俺がヴァンパイアにしてあげるから」
リック「何が大丈夫なんですか」
リック「俺たちを実験台にするよりも、ご自分で試してみてはいかがですか?」
ジュリアン「嫌だ。こんな見るからに怪しい薬、飲みたくない」
リック(こいつ……)
ジュリアン「それに、俺は人間になるつもりなんてないから」
リック「ヴァンパイアのままで居続けると?」
ジュリアン「そう」
リック「………………」
リック「ヴァンパイアは、老化することもなく死ぬこともないそうですね」
ジュリアン「そうだね。俺の母さんも、ああ見えて300歳は越えているらしいし」
リック「このまま永遠の時を生きるつもりですか?」
ジュリアン「そうだよ」
リック「ジュリアン様……」
リック「皆いなくなりますよ。家族に友人、仕事仲間。それに……」
リック「アレクシス様も」
ジュリアン「……」
ジュリアン「だからこそ、俺は残らないといけないんだ」
リック「残る?」
ジュリアン「リックはよく知っているでしょう?」
ジュリアン「今後、ゴールド家の当主の中に、父さんのようにヴァンパイアの力を利用しようとする者が現れるかもしれない」
ジュリアン「もしくは、俺の母さんみたいに、ヴァンパイアの方から近づいて来るかもしれない」
ジュリアン「人の力では抗えない敵が現れた時に、誰がこの家を守るの?」
ジュリアン「人と人でない者の間には、大きな壁がある。利用しようがされようが、そこには悲劇しか生まれない」
ジュリアン「ゴールド家の血を引く子孫には、兄さんや俺のように不幸な人生を送ってほしくないんだ」
リック「……」
リック「驚いたな。ジュリアン様は、ゴールド家に興味なんてないと思っていました」
ジュリアン「……」
ジュリアン「アルフレッドとアリシアに、兄さんの面影を見た」
リック「え?」
ジュリアン「甥や姪なんて興味なかったけど……アルが笑った瞬間に、アリシアが泣いた瞬間に、兄さんの面影を見たんだ」
ジュリアン「あの子たちが、この先不幸な目に遭うかもしれないと考えたら、たまらなくなった」
ジュリアン「アルとアリシアの行く末を、兄さんが築き上げる未来を、見守りたいと思ったんだ」
ジュリアン「……俺も歳かな?」
リック「30歳にも満たない若造が、何言ってるんですか」
リック「ジュリアン様のお気持ちはわかりました。でも、よく考えた方が良いですよ」
リック「大切な人の死を受け入れるのは、簡単なことじゃない。ましてや、死をいくつも経験すれば、心に大きなダメージを受ける」
リック「一度や二度は耐えられても、いつかは心が壊れてしまうかもしれない」
リック「もっとご自分を大切にしてください」
ジュリアン「……」
イヴ「失礼します」
イヴ「リック様。お時間です」
リック「あぁ、ありがとう」
リック「とにかく、実験がしたければ他を当たってください」
リック「俺の部下に手を出したら、旦那様に報告しますからね」
ジュリアン「……」
ジュリアン「すぐ兄さんに告げ口しようとする……」
イヴ「……」
イヴ「その薬、私に分けてもらえない?」
ジュリアン「え?」
イヴ「実験が必要なんでしょう?私が実験台になるわ」
ジュリアン「……本気?」
ジュリアン「どうなっても知らないよ?」
イヴ「……」
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滅多に死にはしないけど、時々死にかけるのが護衛係。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m