怒られるよりも辛いのは、嫌われること。
↓Season 1のまとめは、こちら。
↓Season 2の第1話は、こちら。
ケヴィン「ここが新しい店か」
ケヴィン「ずいぶん広いな」
ジェシー「音楽家がゆっくり語り合えるように、客席数を多くしたんだ」
ジェシー「内装も青を採用して、集中力を高められるように工夫した」
ケヴィン「……お客さんの回転率を上げたほうが、儲かるんじゃないか?」
ジェシー「客単価はSan Myshunoよりも高くなるよう設定しているから、問題ない」
ケヴィン「なるほど」
ケヴィン「オープン前に招待してくれたのは、嬉しいけど……」
ケヴィン「どうして俺なんだ?」
ジェシー「セシルを誘ったら忙しいっていうから、暇そうなお前に声をかけたんだ」
ケヴィン「暇そうって、俺にも仕事が……」
ジェシー「個展が終わって暇してたんだろう?実際、呼んだら来たじゃねぇか」
ケヴィン「……忙し過ぎるから、息抜きに来たんだよ」
ジェシー「それに、絵画を飾っても良いか、お前に確認してほしかったんだ」
ケヴィン「絵画?」
ジェシー「セシルと婚約した時にくれただろう?マリオンに見せたら気に入ったって言うから、この店に飾ることにしたんだ」
ケヴィン「そうか」
ケヴィン「良いよ。トイレ以外の場所なら、好きに飾ってくれ」
ジェシー「そういえば、お前もようやくセシルと婚約できたそうだな。おめでとう」
ケヴィン「ようやくって……本当はもっと前から結婚の話は出ていたけど、正式に婚約したのが最近だったってだけだ」
ジェシー「はいはい」
ジェシー「婚約祝いは何が良い?」
ケヴィン「セシルをもらったから、これ以上何もいらない」
ジェシー「……そうかよ」
ケヴィン「それより、来週オープンなんだろう?開店祝いは何が良い?」
ジェシー「お前がセシルをもらってくれたおかげで、マリオンとの今があるんだ」
ジェシー「これ以上何もいらない」
ケヴィン「そうかよ」
ジェシー「なぁ、ケヴィン。お前に聞きたいことがあったんだ」
ケヴィン「聞きたいこと?」
ジェシー「ジュリアンのことだ」
ケヴィン「あぁ……」
ケヴィン「そういえば、今はお前たちと一緒に暮らしているそうだな」
ジェシー「あぁ。俺はジュリアンの教育係を務めることになった」
ケヴィン「教育係って、何をするんだ?」
ジェシー「セシルからは、人間らしいコミュニケーション能力を育ててほしいって頼まれた」
ケヴィン「……それは難題だな」
ジェシー「あいつ、俺の言うことは素直に聞くけど、イマイチ心に響いていない気がするんだ」
ジェシー「しかも、なにかと嫌味言って突っかかってくるし……」
ケヴィン「なぁ、ジェシー。昔セシルと付き合ってたこと、ジュリアンに話したか?」
ジェシー「確か……出会った日に、セシルと付き合っていたか聞かれたな」
ケヴィン「嫌味の原因はそれだ。俺も散々、目の敵にされてきたからな」
ジェシー「え?」
ケヴィン「ジュリアンは、極度の『ブラコン』なんだよ」
ジェシー「ブラコン?それって……セシルのことが好きってことか?」
ケヴィン「そう。大の『お兄ちゃんっ子』」
ジェシー「本当かよ?……あいつがセシルに従っているのは、ゴールド家の当主を恐れているからだと思ってた」
ケヴィン「いや、ジュリアンはセシルに怒られることは、正直なんとも思っていない。だが、嫌われることは死よりも恐れている」
ジェシー「……」
ケヴィン「ジュリアンの心に訴えかけたかったら、『セシルに嫌われるぞ』って言い聞かせるのが一番だ」
ケヴィン「長年、ジュリアンを育ててきたゴールド家の人たちが言っていたから、間違いない」
ジェシー「……試してみる」
ジェシー「なぁ、ジュリアンの親に関しては何か知らないか?」
ケヴィン「親?」
ジェシー「あいつ、母親とはあまり仲が良くなかったんじゃないか?」
ケヴィン「あぁ……ジュリアンの母親は、子育てに専念するようなタイプではなかったみたいだ」
ケヴィン「セシルとも昔からよく衝突していて、親父さんが亡くなると同時にゴールド家から追い出されたらしい」
ジェシー「……複雑だな」
ケヴィン「ジュリアンは、癖は強いけど根は良い子だ」
ケヴィン「問題があるとすれば、ゴールド家の家庭環境だな。セシルもジュリアンに非はないとわかっているからこそ、お前に任せたんだろう」
ジェシー「なんだよ、それ」
ジェシー「セシルの奴……そういう事情があるなら、事前に話しておいてくれれば良いのに……」
ケヴィン「お前には、わかってるだろう?」
ジェシー「あー……『セシルは肝心なことを話さない』?」
ケヴィン「そういうことだ」
ジェシー「勘弁してくれよ……」
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セシルの口が悪くなったのは、多分レイチェルのせい。
メンタルを鍛えるという意味では、良い練習相手になってくれました。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m