無償の愛を注ぐのに、理由などいらないーー
15年前ーー
メイドA「あの子がアレクシス様?」
メイドB「いくら旦那様のお子様とはいえ、亡くなった母親は私たちよりもずっと身分が低かったらしいわよ」
メイドC「いずれ旦那様がどこかのご令嬢と結婚なされば、すぐに用無しね」
マリア「……」
マリア「アレクシス様、眠れないのですか?」
アレクシス「……」
マリア「寝つけないのなら、私が御本を読んで差し上げましょう」
アレクシス「……必要ない」
マリア「アレクシス様」
マリア「ハグしていただけますか?」
アレクシス「……ハグ?」
マリア「マリアは寂しがり屋なのです」
マリア「だから時々こうして、一緒に過ごしていただけますか?」
アレクシス「……」
アレクシス「……いいよ」
マリア「アレクシス様はお優しいですね」
マリア「ありがとうございます」
マリア(私が、アレクシス様をお守りしなければーー)
コンコン
マリア(あの頃のアレクシス様のように、ジュリアン様も同じ想いを抱えているのかしら……)
ガチャ
マリア「失礼します」
マリア「……ジュリアン様?」
ジュリアン「……」
マリア「顔色が優れませんね。体調が悪いのですか?」
ジュリアン「……平気」
マリア「ベッドまで歩けますか?」
ジュリアン「いいから、俺に構わないで」
マリア「よかったら、お母様を呼んで参りますよ」
ジュリアン「……本気?」
ジュリアン「どうせ呼んだところで来るわけない」
ジュリアン「お前も俺のことを嫌っているんだろう?」
マリア「そんなこと……」
ジュリアン「いいんだ、自分の立場はわかっている」
マリア「ジュリアン様?」
ジュリアン「俺はこの家では、ただの厄介者だ」
マリア「……」
マリア「本当に、私はジュリアン様を嫌ってなどいませんよ」
マリア「お母様には、色々と思うところはありますが……ジュリアン様とは関係ありませんもの」
マリア「アレクシス様だって、レイチェル様とはお世辞にも仲が良いとはいえませんでしたが……ジュリアン様のことは、純粋に弟として可愛がっていらしたでしょう?」
マリア「私はちゃんとわかっていますよ。どんなに反抗的な態度を取っていても、ジュリアン様は素直で優しい一面を持っていることを」
マリア「ご安心ください。例えお母様がお側にいなくとも、私はずっとお側にいますから」
ジュリアン「……」
ジュリアン「……お前が母親だったら良かったのに」
マリア「ジュリアン様……」
不思議なものね。
血は繋がっていないはずなのに、この兄弟はあまりにも似ているーー
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ゴールド家の家庭環境に問題あり。
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