護るのではなく盾となるのが、護衛係の務めであるーー
俺の家は代々、シークレットサービスの会社を経営していた。
Del Sol Valleyに事務所を構え、セレブや企業を護衛する。それが、俺達一族の生業だった。
ゴールド家お抱えの護衛係となったのは、祖父の代でのことだった。
やり手と有名なアレクサンダー・ゴールドは、内外に多くの敵がいた。
そこで、俺の祖父に身辺警護を依頼したのだ。
Del Sol Valleyの小さな事務所から、大富豪専属の護衛係へーー
夢のような大出世だが、喜びも束の間。
アレクサンダー・ゴールドには、俺たちが予想していたよりも遥かに多くの敵がいたらしい。
ゴールド家にやって来てから数年も経たないうちに、俺の親父は、職務中に命を落とした。
仕事が仕事だ。親父の死はショックだったが、全ては覚悟の上。
祖父も俺も、冷静に親父の死を受け止めた。そこまでは良かったのだが……。
アレクサンダー・ゴールドは、とんでもないことを言い出した。
『ゴールド家の専属護衛責任者として、執事長に次ぐ権限を与える』
この一言で、ゴールド家の古株である使用人連中を、完全に敵に回すことになった。
現代は、階級制度なんて古臭いものは消えつつあるが……数百年の歴史を誇るゴールド家内部は、違う。
ゴールド家の使用人といえば、一昔前でいう貴族階級の連中ばかりだ。
中でも、使用人を取り仕切る執事長・グレージュ一族は、そこら辺の名家と呼ばれる家よりもよほど強い権力を握っていた。
そんな連中が、一般庶民である俺達を認めるわけがない。
アレクサンダー・ゴールドの決定が発表されてから、護衛係と使用人の間で、冷戦が始まることとなってしまった……。
使用人連中は、陰で俺達護衛係を『番犬』と呼んでいた。
旦那様について回って仕事をしたような顔をしている、ゴールド家の犬ーー
馬鹿にされて腹を立てる部下もいたが、俺は相手にしなかった。
金も権力も肩書きも、そんなものはどうでも良い。
俺達護衛係の使命は、大切な主人の盾となること。
くだらない肩書きよりも、命をかけたいと思える主人に出会いたいーー
それが、全てだった……。
冷静状態が数年続いた頃、ゴールド家に一人の少年がやってきた。
アレクシス・ゴールドーー
アレクサンダー・ゴールドが、内縁の妻との間にもうけた子供だった。
いずれは、この家を継ぐことになるのだろう。
母親の死をきっかけに引き取られたその日から、俺はアレクシスの護衛を任されることとなった。
リック「初めまして、アレクシス様」
アレクシス「……」
母親が亡くなったというのに、涙一つ流さない。
何を言っても、表情一つ動かない。
リック(なんて可愛げのない子供だろう……)
それが、アレクシス・ゴールドの第一印象だったーー
後編に続く……。
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私は、大の犬好きです。
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