命を掛けて護りたいと思える主人に出会えたら、それ以上の幸せはないーー
↓前編はこちら。
アレクシスがゴールド家に引き取られてから、数ヶ月……。
アレクサンダー・ゴールドへの恨みや憎しみは、当然のように息子にも向いた。
まだ10歳にも満たないアレクシスは、敵からすれば格好の獲物だったのだーー
いつものように学校に迎えに行った時、事件は起きた。
向かって来る暴漢から、アレクシスを守ろうとして……。
俺は、負傷した。
我ながら情けない……。
親父の二の舞にならないように、護衛体制を見直すべきだろうか?
病院で手当てを受けながら、そんなことを考えた。
ゴールド邸に戻ると、部下と一緒にアレクシスが待っていた。
もう寝る時間だというのに、着替えもせずに何をしているのだろう?
そんなことを思っていると、アレクシスは申し訳なさそうに寄って来た。
アレクシス「……ごめんなさい!ごめんなさい、僕のせいで……」
人目もはばからず泣きじゃくるアレクシスを見て、俺はただただホッとした。
なんだ、ちゃんと子供みたいに泣けるんじゃないか……と。
リック「気になさらないでください。これが、俺達護衛係の仕事なんです」
アレクシス「でも……!」
リック「金も権力もどうでも良い。番犬と蔑まれても構わない」
リック「あなたが元気でいてくれることこそが、俺達護衛係の誇りなんです」
リック「だからアレクシス様、笑ってください」
アレクシス「……うん」
この一件以来、アレクシス様は少しずつ心を開いてくれるようになった。
大人びたことを言うかと思えば、子供のように無邪気に笑う。
コロコロ変わる表情が面白くて、俺はアレクシス様を弟のように可愛がった。
どんな状況下でもたくましく生きられるように、良いことも悪いことも全て教えた。
庶民の家に生まれ、貴族の家に引き取られたアレクシス様……。
どちらも経験したアレクシス様は、護衛係とも使用人とも平等に接してくれた。
そんなアレクシス様を見て、俺達護衛係と使用人の間のわだかまりも、自然と溶け始めた。
この聡明で心優しいアレクシス様を、いずれゴールド家の当主にーー
そんな願いが、俺達の結びつきを強くしたのだろう。
ワイアット「またこんなところでサボっていたのか?」
リック「……」
ワイアット「どうした?」
リック「そういえば、お前とマリアだけだな。俺達を『番犬』と呼ばなかったのは……」
ワイアット「……今頃、何の話だ?」
リック「グレージュ家の執事長様であるお前は、誰よりも俺達を認めたくなかったはずだろう?なぜ、黙っていたんだ?」
ワイアット「君達が優秀だということは、知っていた。それに……」
ワイアット「君達をゴールド家に迎え入れたのは、アレクサンダー様だ。護衛係を貶めるということは、主人であるアレクサンダー様を貶めるということ」
ワイアット「護衛係には護衛係のプライドがあるように、執事にも執事のプライドがある」
ワイアット「私にとって、主人の決定は絶対だ。たとえ白いものでも、アレクサンダー様が黒だといえば、黒だと肯く。それが、執事だ」
リック「……なるほどね」
ワイアット「それより、奥様とは上手くいっているのか?」
リック「あぁ」
リック「マリアには……」
ワイアット「伝えていないし、伝えるつもりもない」
リック「……それが良いだろうな」
アレクシス様を護るためなら、手段は選ばない。
例え、友人を裏切ることになったとしても。
それが、俺のやり方だーー
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団結できたのは、多分憎まれ役(レイチェル)のお陰。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m