それぞれの立場、それぞれの使命ーー
アレクシス「お父さん」
アレクサンダー「アレクシス。どうした?」
アレクシス「ワイアットは、家族じゃないの?」
アレクサンダー「え?」
アレクシス「今日学校で、ワイアットは家族だって言ったら、友達から『家族じゃなくて使用人だ』って言われたんだ……」
ワイアット「……」
アレクシス「『使用人』って何?」
アレクサンダー「その友達が言ったことは、半分本当で半分違うな」
アレクシス「どういうこと?」
アレクサンダー「ワイアットは、確かに使用人だ。血の繋がりはない」
アレクサンダー「だが、私達ゴールド家にとっての家族でもある」
アレクシス「……」
アレクサンダー「お金で雇って家のことをしてもらう人のことを、使用人というんだ。つまり私達は雇い主であり、ワイアットは従業員ということになる」
アレクシス「ワイアットが良くしてくれるのは、お仕事だから?」
アレクサンダー「そういうことになるな。だが、それだけではない」
アレクサンダー「ワイアットの一族は、代々ゴールド家を支えてくれた。私達の友であり、家族のような存在だ」
アレクサンダー「だから私達も、応えなければならない」
アレクシス「応える?」
アレクサンダー「そうだ。執事やメイド、護衛係……この屋敷では、多くの人がそれぞれの誇りをもって働いている。だから彼らの活躍の場であるゴールド家を、守らなければならない」
アレクサンダー「それが、ゴールド一族の使命なのだ」
アレクシス「僕もみんなを守るの?」
アレクサンダー「ゴールド家を継いだその時には、お前が守るんだ」
アレクシス「僕にできるかな……?」
アレクサンダー「アレクシス、お前はワイアットが好きか?」
アレクシス「うん。時々怖いけど、優しくしてくれる」
アレクサンダー「そうか。ならば、できるさ」
アレクサンダー「私達ゴールド家と使用人の間には、特別な絆がある。だから、家族ではないけれど、家族なんだ」
アレクシス「……」
アレクシス「少しだけ、わかった気がする」
アレクシス「みんなは僕を助けてくれるから、僕はみんなを守るんだ」
アレクシス「友達は家族じゃないって言うけど、僕にとっては家族なんだ」
アレクシス「でしょう?」
アレクサンダー「良い子だ」
ワイアット(アレクシス様……ご安心ください)
ワイアット(いずれこのゴールド家の当主として立てるように)
ワイアット(私達が、全力でお支えしますーー)
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アレクサンダーが、レイチェルと出会う前のお話です。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m