人は追い詰められると、本性を表すーー
ワイアット「……」
リック「ワイアット、旦那様のご様子はどうだ?」
ワイアット「思わしくないな……」
ワイアット「医師の話では、ご高齢だということもあって回復は難しいそうだ」
マリア「そんな……」
マリア「旦那様……」
レイチェル「あの人、いよいよ危ないみたい」
キース「あぁ……」
レイチェル「あら、浮かない顔ね」
キース「アレクサンダーは、まだジュリアンを後継者だと認めていない。意識のあるうちになんとかしなければ……」
キース「レイチェル、これを使え」
レイチェル「これは?」
キース「反ゴールド同盟に属する人物のリストだ。これを盾に、ジュリアンが後継者だと認めさせろ」
キース「従わなければ、反ゴールド同盟が財閥を崩壊させると」
レイチェル「……」
レイチェル「このリストの人物に、話は通っているの?」
キース「ジュリアンが後継者になった暁には、財閥の幹部に取り立てると約束している」
レイチェル「なるほどね」
レイチェル「でも、あの人はもう死にかけているのよ。こんなことをしなくても、自動的にジュリアンが後継者で決まりでしょう?」
キース「アレクシスの気が変わって、戻って来る可能性を捨てきれない。それに、アレクサンダーに認めさせることこそが重要なんだ」
レイチェル「どうして?」
キース「ゴールド家は元々力のある一族だが、ここまで強大な権力を手にできたのは、アレクサンダーの手腕によるところが大きい」
キース「財閥の中だけでなく、外にもアレクサンダーを支持する者は少なくない」
キース「アレクサンダーは、アレクシスが後継者だと公表しているんだ。そこに承認を得ていないジュリアンが立てば、反発は避けられないだろう」
キース「現に反ゴールド同盟にそれとなく誘ってみても、頑として従わない人間がたくさんいた」
キース「今後、ジュリアンが財閥の実権を完全掌握するためには、アレクサンダーの承認が不可欠なんだ」
レイチェル「……よくわからないけど、とにかくあの人に認めさせなければならないってことね」
キース「だからそう言っているだろう」
レイチェル「でも、アレクサンダーに忠誠を誓うのはわかるけど、アレクシスは姿も見えないのよ?アレクサンダーの支持者が、アレクシスの味方になるとは限らないんじゃない?」
キース「お前は本当に何も知らないんだな……」
キース「アレクシスは高校生の頃から大学卒業まで、財閥が持つ企業で後継者としての教育を受けていたんだ。その時に、ずいぶん優秀な働きをしたらしい」
キース「当時のアレクシスを知る連中は、後継者になることを希望している」
レイチェル「ズルいわ。あの人、ジュリアンにはそんな教育しれくれなかったのに」
キース「とにかく、今が大事な時期だ。お前も遊んでいないで協力しろ」
レイチェル「……わかったわよ」
レイチェル「やるしかないわね」
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レイチェルだけが、事の深刻さに気付いていない……。
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