百の言い訳をするよりも、たった一度の抱擁が大事ーー
ワイアット「失礼致します」
ワイアット「旦那様、お客様がお見えです」
アレクサンダー「あぁ……通してくれ」
ビクトリア「ご無沙汰しております。会長」
アレクサンダー「久しぶりだな、ビクトリア」
アレクサンダー「こんな格好で申し訳ない」
ビクトリア「どうかそのままで」
ビクトリア「お体の調子はいかがですか?」
アレクサンダー「相変わらずだ」
ビクトリア「そうですか……」
アレクサンダー「経営陣はどうだ?会社に変わりはないか?」
ビクトリア「はい、問題ありません。皆、アレクサンダー様の身を案じております」
アレクサンダー「迷惑をかけてすまない」
アレクサンダー「私もこんな調子だ。君達も、代替わりの準備をしてくれ」
ビクトリア「……」
ビクトリア「後継者は、やはりアレクシス様ですか?」
アレクサンダー「そのつもりだ」
アレクサンダー「君はどう思う?」
ビクトリア「アレクシス様は、私が会社に入社したばかりの頃にお会いしました」
ビクトリア「まだ高校生なのに、しっかり手腕を発揮されていて……会長のお姿を重ねたのを覚えています」
アレクサンダー「……」
ビクトリア「このようなこと、申し上げて良いのかわかりませんが……」
ビクトリア「私はアレクシス様の下で働けるのであれば、こんなに嬉しいことはありません」
アレクサンダー「そうか……」
アレクサンダー「後継者が決まれば、しばらく休めなくなるだろう。ビクトリア、今のうちに休暇を取っておきなさい」
ビクトリア「……」
アレクサンダー「あとは任せたぞ」
ビクトリア「……かしこまりました。会長」
ジュリアン「あれ誰?」
マリア「ジュリアン様……!!」
マリア「あの方は、ビクトリア・スカーレット様」
マリア「財閥が持つ会社の、経営陣のお一人です」
ジュリアン「そうなんだ」
マリア「……」
マリア「最近は、ずいぶん積極的ですね」
ジュリアン「何が?」
マリア「誰が来ようが、何が起ころうが、ゴールド家のことには無関心だったのに……」
ジュリアン「俺ももう、子供じゃないんだ。関心を持つのは当然でしょう?」
マリア「子供じゃない……ですか」
ジュリアン「何?」
マリア「大学から連絡がありましたよ。卒業の大切な時期なのに、あまり出席されていないと」
ジュリアン「あぁ……忘れてた」
マリア「ジュリアン様、大学のことも大切ですが……あまり危険なことはしないでください」
ジュリアン「危険なこと?」
マリア「ワイアットやリックと一緒になって、何か企んでいるでしょう?」
ジュリアン「……」
マリア「旦那様のことだけでも心配なのに、ジュリアン様にまで何かあっては耐えられません」
ジュリアン「大丈夫。もうすぐ全て上手くいくから」
マリア「ジュリアン様?」
アリア「それは、どういう……」
ジュリアン「大丈夫。大丈夫だから」
マリア「ジュリアン様……」
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女性の扱い方も心得ている、ジュリアン。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m