女性よりも母親としての気持ちが優先されるのは、当然であるーー
リック「マリア、コーヒー」
マリア「……」
リック「何?」
マリア「あのね、私はあなたのメイドじゃないのよ?コーヒーくらい自分で淹れたら?」
リック「なんだよ、今日は機嫌が悪いな」
マリア「……最近は心配事が多くて、よく眠れないのよ」
リック「だからって俺に当たるなよ。コーヒーくらい淹れてくれても良いだろう?」
マリア「そんなにコーヒーを淹れて欲しいなら、彼女にでもお願いしたら?」
マリア「あぁ、レイチェル様はコーヒーの淹れ方なんてご存知ないわね」
リック「お前……」
リック「……知っているのか?」
マリア「あなたとレイチェル様が関係を持っていること?」
リック「……」
マリア「この屋敷で起こることは、何でも知っているわ。私はここで生まれて、ずっとゴールド家にお仕えしているんだから」
マリア「この屋敷のことは隅々まで把握している。メイド長だもの、当たり前でしょう?」
リック「マリア、これには事情が……」
マリア「あなたとレイチェル様が何をしていようと、どうだって良いわ」
リック「どうだって良いって、お前……」
マリア「それよりも、ジュリアン様のことよ」
リック「ジュリアン様?」
マリア「あなた、ワイアットと一緒になって、ジュリアン様に危険なことをさせようとしているでしょう?」
マリア「ジュリアン様にもしものことがあったら、許さないから」
リック「お前は、ジュリアン様の母親か……」
マリア「ジュリアン様は、私たち使用人が育てたようなものだもの。母親も同然よ」
リック「……」
リック「危険なことをさせるつもりはない。だが、俺たちにジュリアン様がすることを止める権利もない」
マリア「じゃあ、護ってよ。あなた護衛係でしょう?」
リック「護ってるよ。仕事だからな」
リック「お前、俺が死ねば良いと思ってるだろう?」
マリア「レイチェル様と関係を持つとか、本当無理。心から軽蔑する」
リック「……」
マリア「ジュリアン様にはバレないようにしてよ。母親が不倫してるなんて知ったら、ショックを受けられるわ」
リック(もう知ってるって言ったら、軽蔑じゃ済まないだろうな……)
リック「なぁ、マリア」
マリア「何よ?」
リック「お前は平気なのか?」
リック「俺がレイチェル様と関係を持っていても」
マリア「……」
マリア「私がキースと関係を持っていたとしたら、どうする?」
リック「うわ……」
マリア「私の気持ちがわかった?」
リック「……なんだよ」
リック(少しくらい妬いてくれても良いのにーー)
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なんだかんだ言いつつも、コーヒーは淹れてくれる。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m