本来なら決して交わることのない二つの道も、主のためなら一つになるーー
リック「それで?」
リック「なんでお前がここにいるんだ?」
ワイアット「……」
リック「ワイアットが外に出るなんて珍しいな」
リック「それも奥様の買い物に付き添うなんて……マリアはどうした?」
ワイアット「……本来なら奥様の担当であるマリアが付き添う予定だったのだが、あの二人は折り合いが悪くてな」
ワイアット「今朝も言い合いが始まって、急遽私が代わりに付き添うことになったんだ」
リック「マリアは変に正義感強いし、奥様は自分のルールを曲げないタイプだからな」
ワイアット「マリアは奥様の担当を外して、ジュリアン様の担当にしようと思う」
リック「奥様の担当は誰がするんだよ?」
ワイアット「メイドを付けると辞めさせられるから、私か他の執事に……」
リック「奥様!あまり窓際には近付かないでください」
リック「それからあんまり長居すると、またうちの護衛係に置いて行かれますよ」
レイチェル「私の護衛係が、私を置いて行ってどうするのよ!」
レイチェル「まったく……あんた達、自分の仕事がわかっていないんじゃないの?」
ワイアット「……」
ワイアット「リック、どうして君は奥様に好き勝手言えるんだ?」
リック「え?」
リック「俺は別に嫌われてもいいと思っているし、奥様も俺に紳士的な対応は期待できないとわかっているからかな」
ワイアット「……つくづく羨ましい奴だな」
リック「お前も好きに言えばいい」
リック「これ以上甘やかすと、奥様もキースもますますつけ上がるだけだぞ」
ワイアット「そうだな……」
ワイアット「リック、君を奥様の担当に指名する」
リック「……は?」
ワイアット「私は旦那様の担当に戻るから、奥様の世話係は任せたぞ」
リック「ちょっと待て、俺は執事でもメイドでもないんだぞ……」
ワイアット「……ということで、私は帰らせてもらう」
リック「は?」
ワイアット「奥様を頼んだぞ」
リック「おい、ワイアット……」
リック「あいつ、相当参っているな……」
幸い旦那様は外に出ることはないし、アレクシス様も不在だし……。
職務の垣根を超えて、少しだけ協力してやるかーー
レイチェル「リック、帰るわよ」
レイチェル「あんた達もちゃんと待っていたわね」
リック「奥様……」
リック「ワイアットには置いて行かれましたよ」
レイチェル「え!?」
----------------------------------------
旦那様担当→ワイアット
レイチェル担当→リック
ジュリアン担当→マリア
↓前回レイチェルが置き去りにされた話は、こちら。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m