複雑に絡み合った関係は、簡単には解けない。
↓Season 1のまとめは、こちら。
↓Season 2の第1話は、こちら。
ケヴィン「この店、いつもこんなに暇なのか?」
ジェシー「まさか。開店前にセシルから連絡があったんだ。『飲みに行ってやるから、貸し切りにしろ』って」
ジェシー「普段なら断るところだけど……セシルにはこの店を救ってもらった恩があるから、OKしたんだ」
ケヴィン「そうか」
ケヴィン「『自分の店』って……お前、作詞家辞めたのか?」
ジェシー「セシルがいないんじゃ仕事にならない。あいつ以外が作った曲に、詞をつける気はないからな」
ケヴィン「……」
ジェシー「クロエとエマは元気か?」
ケヴィン「あぁ、高校に進学して勉強を頑張ってる」
ケヴィン「San Myshunoでは、あの子たちが世話になったらしいな」
ジェシー「世話ってほどのことはしていないけどな」
ジェシー「クロエもエマも、本当に良い子だ。可愛くて賢くて、優しい」
ジェシー「きっと奥さん似だな」
ケヴィン「……一言多いんだよ」
ケヴィン「そういえばお前、セシルの実家のこと知らなかったって本当か?」
ケヴィン「婚約までしていたのに、どうして話してもらえなかったんだろうな?」
ジェシー「……」
ジェシー「セシルと婚約できていないお前が、したり顔すんな」
ケヴィン「……」
ジェシー「……」
ケヴィン「ダメだ。このままじゃ、お互い傷口を広げるだけだ」
ジェシー「その意見には賛成」
ケヴィン「……」
ケヴィン「セシルが実家のことを話さなかったのは、お前を護るためだ」
ジェシー「……護る?」
ケヴィン「昔からセシルは、どんなに仲の良い相手にもゴールド家のことは口にしない。相手を危険に晒す可能性があるからだ」
ジェシー「どうして?」
ケヴィン「金持ちってのは、自然と敵が多くなるものなんだよ。誘拐しようとする奴もいれば、危害を加えようとする奴もいる」
ケヴィン「実際、俺もセシルと一緒に、何度も危険な目に遭ってきたしな」
ジェシー「……」
ケヴィン「あの家の護衛係が優秀なおかげで、実害はなかったけど……ゴールド家の人間を知っているというだけで狙われたこともある」
ケヴィン「そんな経験を繰り返せば、セシルだって学ぶ。周囲の人間には、絶対に実家のことを話してはいけない……って」
ケヴィン「あいつにとって大切な人であればあるほど、ゴールド家の名は口にできなくなるんだ」
ジェシー「……なるほど。俺は愛されていたってことか」
ジェシー「お前、たまには良いことも言えるんだな」
ケヴィン「お前みたいな性悪と一緒にするな」
ジェシー「……」
ジェシー「『ちょっと良い奴かも』って思った10秒前の俺の気持ちを返せ」
セシル「ゴールド財閥は、最近新規事業の開拓に乗り出した。その一つに、飲食業の部門がある」
マリオン「都市開発や公共事業じゃ飽き足らず、飲食業にまで手を出すつもり?世界一の金持ちのクセに、まだ稼ぎ足りないって言うの?」
セシル「その都市開発や公共事業が落ち着いてしまったから、新たな稼ぎ口が必要なんだ。世界一の金持ちも楽じゃねぇんだよ」
マリオン「やだ、素敵。私も一度で良いから、そんなセリフ言ってみたいわ」
セシル「……」
セシル「うちは資金は潤沢にあるが、知識と経験を持つものが少ない。そこで、お前をコンサルタントの一人として迎えたい」
マリオン「コンサルタント?」
セシル「もちろん、自分の店を優先してくれて構わない。時間があるときに、その豊かな知識と経験をうちの事業に活かして欲しいんだ」
セシル「希望通りの報酬は用意するし、もしも他に出店予定があるなら出資しても良い」
マリオン「……すごい高待遇。裏はないでしょうね?」
セシル「うちはイメージ商売だ。どこぞの悪徳投資家と一緒にするな」
マリオン「そうよね」
マリオン「大財閥のトップ自らスカウトしてくれるなんて、こんなに光栄なことはないわ」
マリオン「あなたには救ってもらった恩があるから、二つ返事で頷きたいところだけど……」
セシル「だけど?」
マリオン「ビジネスパートナーの意見も聞いてみないと」
セシル「……ジェシーか」
セシル「どの道、今日中に返事をもらおうとは思っていない。ゆっくり考えてくれ」
マリオン「わかったわ」
セシル「……」
セシル「マリオン」
マリオン「何?」
セシル「どうしてお前のような賢い人間が、あんな男に騙された?」
マリオン「……」
マリオン「どんなに賢い頭があっても、弱っている状況じゃ使えない」
マリオン「あいつに会ったときは、色々あってね。冷静な判断ができなかったのよ。でも、お陰で良い人生勉強ができた」
セシル「……」
セシル「お前は、こんなところで終わって良い人間じゃない」
セシル「次は間違えるな」
マリオン「……」
マリオン「覚えておくわ」
セシル「ケヴィン、仲良くできたか?」
ケヴィン「ジェシーが俺のこといじめる」
ジェシー「お前、本当……」
セシル「楽しい時間が過ごせたようで何よりだ」
セシル「マリオン、返事が決まったら連絡してくれ」
マリオン「了解」
セシル「ほら、帰るぞ」
ケヴィン「……なぁ、セシル」
ケヴィン「俺、全然お前と飲めてないんだけど」
セシル「家に帰ったらな」
ジェシー「返事って?」
マリオン「家に帰ったらね」
ジェシー「?」
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マリーちゃんの過去のお話は、また後日。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m