善い行いをすると、思わぬ恩恵を受けられるーー
↓Season 1のまとめは、こちら。
↓Season 2の第1話は、こちら。
ビクトリア「お帰りなさい、クリス」
ビクトリア「久々の都会はどう?」
クリス「……居心地が良いとは言えないけど、懐かしいですね」
ビクトリア「あなたが復帰してくれて、感謝しているわ」
クリス「力になれることがあると良いんですけど……」
ビクトリア「もちろんあるわ!私だけじゃない。あなたには、上層部が大きな期待を寄せているの」
クリス「……え?どういうことですか」
ビクトリア「だって、あなたは今や『生ける伝説』ですもの」
クリス「……伝説?」
ビクトリア「あなたが十年前に打ち立てた営業記録は、いまだにどの社員も破れていないのよ。あなたはロールモデルとして、新人研修にも取り入れられている」
ビクトリア「この会社であなたのことを知らない人間なんて、いないわ」
クリス「……」
クリス「……どこにいても視線を感じたのは、そのせいですか?」
ビクトリア「あなたは、みんなの憧れであり目指すべき目標なのよ」
ビクトリア「本当は営業に戻ってほしいところだけど……今後あなたには、もっと重要な役割をお願いしたいの」
クリス「重要な役割?」
ビクトリア「具体的に何をしてもらうかは、まだ言えないんだけど……次期会長が決まり次第、辞令が下りるはずよ」
クリス「部長……じゃない、社長の下で働けるんですよね?」
ビクトリア「あら、私のことは『ビクトリア』で良いわ。あなたはもう、私の部下じゃない。今後も次期会長の考え次第では、私以外の人間についてもらうことになるだろうし……」
クリス「……そうですか」
ビクトリア「配属先が決まるまで、当面の間は『ビジネスマンの勘』を取り戻すことに専念してもらうわ」
クリス「何をすれば良いんですか?」
ビクトリア「あなたのデスクを用意したから、ここで思う存分、十年間のビジネス界の変遷をチェックして頂戴」
クリス「まさか……これ全部読めって言うんですか?」
ビクトリア「『読む』んじゃなくて、『頭に叩き込む』のよ。クリス」
クリス「……ですよね」
クリス(そうだ。部長は、こういう人だったな……)
ビクトリア「そういえば、アパートは見つけたの?」
クリス「いえ。何も準備せずに来てしまったので、当面はホテルに滞在しようかと」
ビクトリア「それなら、提案があるんだけど……」
クリス「すごい!きれいな部屋ですね」
ビクトリア「必要な物は一通り揃っているから、自由に使って」
クリス「ご自宅に置いてもらえることは、有り難いんですけど……本当に良いんですか?」
ビクトリア「もちろん。わざわざSulaniから戻って来てくれたんだもの。自宅ぐらい喜んで提供するわ」
クリス「あの、失礼ですけど……ご結婚は?」
ビクトリア「結婚?してるわよ」
クリス「え……」
ビクトリア「会社とね。だから社長になれたの」
クリス「それって……」
ビクトリア「残念ながら、プライベートでは独身よ。この家には私しかいないから安心して」
クリス「そうなんですね……よし」
ビクトリア「よし?」
クリス「あ、いえ……なんでもないです」
ビクトリア「あなたは、2階の部屋を使って」
クリス「広い部屋ですね」
ビクトリア「足りないものがあったら、遠慮なく言ってね」
クリス「ありがとうございます」
ビクトリア「……」
ビクトリア「ねぇ、クリス」
クリス「はい」
ビクトリア「どうして戻って来てくれたの?」
クリス「そうですね……」
クリス「俺を育ててくれた会社に、恩返しをしたかった……って答えるのが、正解なんでしょうけど」
クリス「ビクトリアさんの力になりたかった。それだけです」
ビクトリア「クリス……」
ビクトリア「ありがとう。仕事を抜きにしても、あなたが戻ってくれて嬉しいわ」
ビクトリア「おやすみなさい」
クリス「……おやすみなさい。ビクトリアさん」
パタン
ビクトリア「私のため……か」
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クリスとビクトリアは、似たもの同士。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m