私達は、主に捨てられたのだろうか?ーー
マリア「はぁ……」
ワイアット「マリア、こんなところで休憩か?」
マリア「ワイアット……」
ワイアット「どうした?」
マリア「……ねぇ、アレクシス様は私達を捨てたのかな?」
ワイアット「マリア……。
そんなわけないだろう」
ワイアット「アレクシス様は、ご自分の立場をよく理解している」
ワイアット「旦那様の第一子といえど、身分の低い女性との婚外子」
ワイアット「ご自分がこの家を継げば、正妻であるレイチェル様やジュリアン様の立場がない」
マリア「だから……自らこの家を出たと?」
ワイアット「おそらく」
ワイアット「アレクシス様のお心遣いを、レイチェル様は理解していないようだがな」
マリア「アレクシス様が出て行かれてから、この家を去る使用人が増えたわ」
ワイアット「マリア、まさか君も出ていくつもりか?」
マリア「……」
マリア「ねぇ、アレクシス様は戻って来るかな?」
ワイアット「それは……わからない」
ワイアット「アレクシス様は後継者の座を放棄したが、実は正式な手続きは踏んでいないんだ」
マリア「どういうこと?」
ワイアット「アレクシス様が一方的に放棄すると宣言しただけで、旦那様も認めていなければ法的な書面を残したわけでもない」
マリア「それじゃあ……戻ってくる可能性があるってこと?」
ワイアット「可能性は低いが、ないとも言い切れない……といったところか」
マリア「そう……」
マリア「じゃあ、私は待ってみようかな」
マリア「アレクシス様が戻ってきた時に、古株の私がいなかったら困るでしょ?」
ワイアット「マリア……」
ワイアット「戻ってくるかはわからないし、戻ってきたとしても何年後、あるいは何十年後になるかもわからないぞ」
マリア「それでも!」
マリア「戻ってくる可能性が少しでもあるのなら、私は残るーー」
マリア「あなたは?ワイアット」
ワイアット「もちろん、残るさ」
ワイアット「この家で生まれて、生涯この家に仕える」
ワイアット「それが、私の使命なのだからーー」
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ワイアットとマリアは幼馴染み。
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