雪の街を離れて、南の島に旅立った。自分の人生を取り戻すためにーー
俺とあいつの出会いは、大学の寮でのことだった。
一年先に入寮していた俺は、新人である後輩を快く迎え入れた。
学部も性格も違うのに、俺達は不思議と気が合った。
一年先輩である俺にも、気さくに接する後輩。
互いの距離感が心地良くて……。
気付けば、学校でも寮でも一緒に過ごすようになっていた。
俺は一年先に、大きな街に出て仕事に就いた。
名門大学を首席で卒業したおかげで、大手企業にストレートで就職。
仕事のプレッシャー以上に、実家からのプレッシャーが大きくて……。
期待されているのがわかっていたから、寝る間も惜しんで死に物狂いで働いた。
仕事を始めて三年。
記録的な営業成績を収めて異例の出世を成し遂げた俺は、有頂天だった。
俺以上に幸せな男などいないーー
そう、確信していた。
後輩から送られてきた、一枚の写真を目にするまでは……。
ライアン『先輩、久しぶりっす!
俺は今、南の島で気ままに暮らしてます♪
よかったら先輩も遊びに来てください。
土地だけはあるんで、なんなら引っ越して来てもいいっすよ(笑)』
後輩からのメッセージに、釘付けになった。
ライバルを蹴落として、実家に認められることだけを目標に生きてきた。
そんな自分の人生に、俺は初めて疑問を抱いたーー
思えば俺にとって一番幸せな時間は、後輩と過ごした大学時代だった。
馬鹿みたいにはしゃいで、子供みたいに笑い合う。
そんな下らない時間が、今の俺には何より輝いて見えた。
気付くと俺は、実家に別れを告げて、会社に辞表を提出していた。
周囲の引き止める言葉も聞かずに、飛行機のチケットを握り締めていた。
味気ないエリート人生と、決別するために……。
ライアン「いやー、先輩久しぶりっすね!
それにしても、マジで引っ越して来るとは思いませんでした(笑)」
クリス「お前……。土地ならあるっつーか…むしろ……」
「土地しかねぇじゃねーか!!」
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サバイバル生活の始まりです。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いします。