遠回りをしなければ、気付けないこともあるーー
クリス(一つの時代が終わって、一つの時代が始まるのかーー)
クリス(まさか、あの部長が弱音を吐くなんて……)
クリス(10年もブランクがある俺に声をかけるくらいだ。よほど助けが必要なんだろうな)
ハワード「あぁ、電話です。ちょっと待っていてくださいね」
ルナ「うん」
クリス「なぁ、ルナ」
ルナ「何?クリス」
クリス「ルナはこの島が好き?」
ルナ「もちろん、好きだよ。今度リタのお仕事を手伝うの」
クリス「ルナは本当に、海が好きなんだな」
ルナ「うん。将来はリタみたいに海洋生物学者になるの」
クリス「そうか……」
クリス「都会には興味ない?」
ルナ「都会?……行ってみたいとは思うけど、海がないから嫌」
ルナ「クリスどうしたの?なんか変だよ?」
クリス「……」
クリス「なあ、ルナ。聞いてくれるか?」
ルナ「……うん」
クリス「もしも俺が都会に行くって言ったら、どうする?」
ルナ「……え?」
ルナ「クリス、都会に行っちゃうの?」
クリス「いや、まだ決めたわけじゃ……」
ルナ「ライアン、リタ!クリスが都会に行っちゃうって!」
クリス「あ、ルナ……」
ハワード「……すみません、掛け直します」
リタ「クリス、都会に戻るって本当?」
クリス「……」
クリス「まだ決めたわけじゃないけど……一応考えている」
ライアン「ないない。先輩は都会が嫌でこの島に来たのに、今更戻るわけないって」
クリス「……いや、真剣だ」
ライアン「どうして?こんなに立派な家も建てて、仕事も順調なのに……」
クリス「だから、戻ろうと思うんだ」
ライアン「先輩……?」
クリス「ずっと、周りのせいにしてきた」
クリス「苦労ばかり抱え込んで、人生に楽しみを見出せないのは、親や会社のせいなんだって」
クリス「でも……結局、自分で選んだSulaniの生活の中でも、生き方を変えることはできなかった」
ライアン「……」
クリス「ようやく気付いたんだ。生き方を決められていたんじゃなくて、俺は元々こういう個性を持った人間なんだって」
クリス「きっと、これからもたくさん苦労を抱え込んで、葛藤して……一つずつ目標を達成していくんだろう」
クリス「こんな自分が嫌だと思ったこともあるけど、今はそうでもない」
クリス「どうせ今後も同じ生き方をするなら、俺を必要としてくれる人の元で生きたいんだ」
ライアン「ルナはどうするんですか?作物だって、先輩がいないと……」
クリス「ルナには、母親も先生もいるだろう。作物の作り方は島民も知っているから、名産品がなくなる心配もない」
ライアン「でも……」
クリス「ライアン。俺がここでするべきことは、もう何もないんだ」
ライアン「でも、先輩……」
ハワード「今すぐに島を離れなければならないんですか?」
クリス「いえ……でも、ゆっくりしている時間はなさそうです」
リタ「とりあえず、今日はもう休みましょう。明日また、ゆっくり聞かせてもらうわ」
リタ「ねぇ、ライアン」
ライアン「……あぁ」
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クリスは、どこに行ってもクリス。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m