相手の幸せを願うことこそ、本当の愛であるーー
クロエ「……それで?」
エマ「セシルは、どうして帰って来ないの?」
ケヴィン「……」
クロエ「パパ?」
エマ「黙っていたらわからないでしょう?」
ケヴィン「ちょっと、仕事で……」
エマ「仕事で3ヶ月も帰って来ないことなんて、今までなかったよ」
クロエ「セシルがいなくなってから、パパも元気ないし……何があったの?」
ケヴィン「なんていうか、その……ケンカして……」
クロエ「本当にただのケンカ?」
エマ「どうせパパに甲斐性がないせいで、セシルにフラれたんでしょう」
ケヴィン「フラれたって……何言って……」
エマ「だからさっさとセシルと再婚しておけば良かったのにね」
クロエ「モタモタしてるから、他の人に取られちゃうんだよ」
ケヴィン「ちょっと待て。お前たち、どこまで知っているんだ?」
クロエ&エマ『全部』
ケヴィン「……」
エマ「パパだってセシルのこと好きなクセに、どうしていつまでも行動しないの?」
ケヴィン「好きって……パパの好きは、友達としてであって……」
エマ「好きだよ。セシルといる時のパパは、ママといる時のパパと同じだもん」
ケヴィン「……ママのこと、覚えているのか?」
エマ「少しだけどね。パパとママが仲良かったのは覚えてるよ」
エマ「ママが亡くなってもう十年だよ?そろそろ自分の幸せを考えたら?」
ケヴィン「……」
ケヴィン「俺は、幸せになってはいけないんだ」
エマ「パパ……?」
ケヴィン「画家になる夢を叶えて、子供たちの成長を見守って……幸せになればなるほど、辛くなる」
ケヴィン「リリアンは、シェフになる夢も叶えられず、子供たちの成長も見守ることもできなかったんだ。これ以上の幸せを望むなんて、リリアンに申し訳ない……」
エマ「パパ……」
クロエ「……」
クロエ「パパがママの立場なら、どう思う?」
ケヴィン「……え?」
クロエ「パパが亡くなった後、ママの親友が同居して子育てをサポートしてくれるの」
クロエ「ママの親友は、パパもよく知っている友達だよ」
ケヴィン「……それで?」
クロエ「子供たちが立派に成長して、ようやくママもシェフになる夢を叶えた。子育てもひと段落したところで親友と良い雰囲気になるけど、ママはそれを拒否」
クロエ「一生パパのことを想いながら、一人で寂しく暮らすの」
ケヴィン「そんなのダメだ!」
クロエ「どうして?」
ケヴィン「リリアンには、幸せになって欲しいから……」
クロエ「ママが親友とくっついても平気?」
ケヴィン「……リリアンが幸せになれるなら、そうするべきだ」
クロエ「……そう。ママもきっと、同じ気持ちだろうね」
ケヴィン「……」
クロエ「セシルを探して。ちゃんと話し合わないと」
エマ「このままお別れなんて、ママも悲しむよ」
ケヴィン「……そうだな」
セシル「なぁ、あのさ……」
ジェシー「どうした?」
セシル「この間言ってた、婚約の話だけど……」
ジェシー「あぁ」
セシル「あの話って、まだ有効か?」
ジェシー「……」
ジェシー「もちろんーー」
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相手の立場に立つって、案外難しい。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m