古い夢の終わりは、新しい夢の始まり。
↓Season 1のまとめは、こちら。
↓Season 2の第1話は、こちら。
ルナ「ご馳走様でした」
ハワード「バイオレットさんは、本当に料理が上手ですね」
ハワード「私は料理が苦手なので、助かります」
バイオレット「ルナがSulaniの料理を教えてくれたおかげで、レパートリーが広がったわ」
ルナ「リタが教えてくれたんだよ」
ルナ「そういえば、ウィルは?」
ハワード「庭の様子を見に行きましたよ。いよいよ明日は、作物を出荷するそうです」
ルナ「もうそんな時期?明日はお手伝いしないと」
バイオレット「……」
バイオレット「出荷できそう?」
ウィル「あぁ。明日にはできるかな」
バイオレット「上手く育ったのね」
ウィル「どうだろう?一応形にはなってるけど……味はわからないな」
ウィル「明日、料理してくれる?」
バイオレット「もちろん」
バイオレット「ねぇ、ウィル。園芸は楽しい?」
ウィル「……」
ウィル「バイオレット、初めてデートした日を覚えてる?」
バイオレット「えぇ。図書館に行ったわ」
ウィル「そう。君は料理の本を読んでいて……」
バイオレット「あなたは園芸の本を読んでいた」
ウィル「San Myshunoで生まれ育った俺が、まさか園芸を仕事にできるなんてね。思わぬ形で夢が叶った」
バイオレット「夢……?」
バイオレット「……ウィル、ごめんなさい」
ウィル「何?」
バイオレット「警察官になることは、子供の頃からの夢だったんでしょう?」
バイオレット「あなたの夢を、私が台無しにしてしまった」
ウィル「バイオレット……」
ウィル「どうして犯罪の道を選んだ?」
バイオレット「……」
バイオレット「手っ取り早く大金を稼げたから」
ウィル「……」
バイオレット「初めは、単なるバイト感覚だった。言われた仕事をして、お金をもらう。それだけ」
バイオレット「ある程度お金が貯まったら、すぐに辞めるつもりだったの」
バイオレット「でも……」
ウィル「でも?」
バイオレット「組織の中で再会したのよ。養護施設で一緒に育った男の子に」
ウィル「その子も組織にいたの?」
バイオレット「そう。私と全く一緒。ただお金が欲しいっていう理由だけで、犯罪組織に入ったの」
バイオレット「なんとなく、彼を一人残していくことに気が引けたわ。組織に留まって仕事をこなすうちに、重要な仕事も任されるようになって……気付いたら、幹部の一員になっていた」
ウィル「その子は、まだ組織に?」
バイオレット「わからない」
バイオレット「彼は頭が良かったから、途中から窃盗とは違う仕事を任されていたの。もう何年も会っていないわ」
ウィル「そう……」
バイオレット「改めて思った。これ以上、私たちのような人間を増やしてはいけないって」
ウィル「だから養護施設に寄付を?」
バイオレット「そうね。でも、本当は……」
バイオレット「償いをしたかっただけ。単なる私のエゴよ」
ウィル「……」
ウィル「君の所属していた窃盗団の被害に遭ったのは、裕福な家庭ばかりだった」
バイオレット「盗みに入る家は、選んでいたもの」
ウィル「被害に遭ったことで、生活に困るような人はいなかったけど……形見や記念品、思い出の詰まった品を盗まれた人もいた」
バイオレット「……」
ウィル「とても怒っていたよ。調書を取った時には、早く取り戻してくれと懇願された」
ウィル「盗まれた物が戻ってくることはなかったけどね」
バイオレット「……」
ウィル「それでも、被害者たちを慰める事実が一つだけあった」
バイオレット「何?」
ウィル「被害者たちに伝えたんだ。『あなたたちの思い出の品の大半は、換金されて養護施設に寄付されていました』ってね」
バイオレット「……」
ウィル「君たちがやったことは犯罪だ。多くの人の心を傷つけたし、決して許されることではない。でも……」
ウィル「善い行いもした。それもまた、事実だ」
ウィル「法的には解決したし、今も警察の捜査に協力している。ローズも君のおかげで立派に成長したし、俺は念願の園芸家になれた。もう十分だよ」
バイオレット「……」
バイオレット「ローズも同じ気持ちでいてくれれば良いけど……」
ウィル「……」
ウィル「ルナを気にかけているのは、ローズの影響?」
バイオレット「……そうかもしれない。あの子を見ていると、幼い頃のローズを思い出す」
バイオレット「そういえばあの子、私たちがSan Myshunoを離れる前に、カイルの父親に会いに行くって言っていたのよ」
バイオレット「どうなったのか気になるし、心配だわ」
ウィル「そうか……」
バイオレット「電話もいけないの?」
ウィル「残念だけど……通信記録から居場所を特定されることもある。お互いの安全のためにも、電話はしない方が良い」
バイオレット「……」
ウィル「バイオレットとローズを結びつける情報は、警察が隠しているけど……」
ウィル「俺たちの戸籍を完全に消し去って、新しいIDを作り直すくらいしないと、ローズに連絡を取ることは難しいな」
バイオレット「一度死んで生まれ変わらなければ、無理ってことね」
ウィル「明日、隣の島に行って本部と連絡を取るから、何か手立てがないか探ってみるよ」
バイオレット「ありがとう」
ハワード「……」
ハワード「そういうことですか……」
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ゴールド家並に盗み聞きが定着しつつある、Sulani世帯。
↓ウィルとバイオレットの初デート回は、こちら。
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