共有できないことでも、共感することはできる。
↓Season 1のまとめは、こちら。
↓Season 2の第1話は、こちら。
マリア「クリスさん、お帰りなさいませ」
クリス「ただいま戻りました」
クリス「マリアさん、会長は書斎ですか?」
マリア「旦那様は……まだ寝室にいらっしゃいます」
クリス(すっかり夜型に戻っているな……)
ローズ「クリスさん、お帰りなさい」
クリス「ローズ……少し話せるか?」
ローズ「え?……うん」
ローズ「……お姉ちゃんに会った?」
クリス「あぁ。元気そうだったよ」
クリス「これ、お土産」
ローズ「何?」
クリス「バイオレットから手紙の返事を預かってきたんだ」
ローズ「本当?……ありがとう」
クリス「……」
クリス「良いお姉さんだな」
ローズ「うん。私にとっては、最高のお姉ちゃん」
クリス「どうして犯罪の道を選んだのかわからないけど……実際に会ってみて、すごく良い人だっていうのはわかった。もちろん、ウィルも」
ローズ「……」
ローズ「……私のせいなの」
クリス「え?」
ローズ「私たちは、貧しい養護施設で育ったの。最低限の生活は保証してもらえるけど、誕生日もクリスマスもなし。そんな場所」
ローズ「お姉ちゃんは私にお金の苦労をさせたくなくて、大金を稼げる犯罪の道を選んだの」
クリス「……そうか」
クリス「お金の苦労はあったかもしれないけど……良い家族に巡り会えて、羨ましいよ」
ローズ「羨ましい?」
クリス「あぁ」
クリス「俺の生まれ育った家は、裕福だった」
クリス「ゴールド家には足元にも及ばないけど……大きな不動産会社を経営していたおかげで、学費の高い学校にも行かせてもらえた。でも……」
クリス「家族仲は最悪だった」
ローズ「……」
クリス「親が子供に興味を示すのは、成績表が渡される学期末とテストの結果が発表された時だけ。どれだけ良い成績を残したか、どれだけ世間に評価されているか、興味があるのはそれだけだ」
クリス「俺には二つ上の兄がいたけど、会話らしい会話なんてした記憶はない。俺たちは親から比較されるだけの、ただのライバルだったから」
ローズ「そうなんだ……」
ローズ「血の繋がりが羨ましいと思っていたけど、家族にも色々な形があるんだね」
クリス「あぁ……」
クリス「ローズ、ごめん」
ローズ「何?」
クリス「Sulaniに行く前に、お姉さんのことを悪く言ってしまったから」
ローズ「いいの。全部本当のことだし……」
ローズ「私だって、カイルの側に犯罪歴のある人がいるって知ったら、冷静じゃいられない。それに……」
ローズ「ようやく本当のクリスさんに会えた気がする」
クリス「本当の俺?」
ローズ「そう」
ローズ「敬語使ってよそよそしい態度をとられるより、こっちのクリスさんの方が好き」
クリス「……それって良いことなのか?」
ローズ「良いか悪いかはわからないけど、私は嬉しい」
クリス「……そうか」
ローズ「娘さんにも会った?」
クリス「もちろん」
ローズ「ルナちゃん……だっけ?写真見せて」
クリス「良いよ」
セシル「……」
セシル「クリス」
クリス「会長」
クリス「ようやくお目覚めですか?」
セシル「……寝室で仕事してたんだよ」
クリス「パジャマ姿で何言ってるんですか?」
セシル「ローズと和解できて良かったな」
クリス「……ありがとうございます。Sulaniに戻れたおかげで、色々なことに気付けました」
セシル「そうか」
クリス「それはそうと、俺がいない間に仕事は進めていただけましたよね?」
セシル「あぁ……やっておいた。寝る間も惜しんでやっておいた」
クリス「……会長」
クリス「『視線解析』って知ってますか?」
セシル「なんだそれ」
クリス「『目』というのは、脳と直接つながっている器官の中で、唯一外部にむき出しになっている器官なんです。『目』の動きを見ることで、脳で考えたことがある程度わかるんですよ」
クリス「例えば、今考えたことが『過去に実際に起きた出来事』なのか、それとも『単なる想像上の出来事』なのか……ってね」
クリス「つまり、嘘をついているか否かがわかるんです」
セシル「……」
クリス「会長?」
クリス(逃げた……!!)
クリス「ちょっと待ってください、会長!あんた子供かよ!?」
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クリスの実家のお話は、また後日。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m