価値観は、意味付けによって大きく左右される。
↓Season 1のまとめは、こちら。
↓Season 2の第1話は、こちら。
セシル「地下なんて、息が詰まると思っていたが……」
セシル「案外、居心地が良いな」
ケヴィン「だろう?」
ケヴィン「滅多に人が来ないから、仕事にも集中できる」
セシル「……誰か来ることもあるのか?」
ケヴィン「左の部屋は、ジュリアンが寝室にしているし」
ケヴィン「右の部屋は、ローズがクローゼット代わりに使ってる」
セシル「あいつら、いつの間に……」
ケヴィン「そうそう、テディもよく遊びに来るな」
セシル「俺よりもテディの方が、この家に詳しそうだ」
ケヴィン「そうかも知れないな」
セシル「仕事、忙しいのか?」
ケヴィン「いや……」
ケヴィン「個人展の話が来ていたり、絵画の注文を受けていたりするけど……お前ほど忙しいわけじゃない」
セシル「……年末から仕事続きで悪かった」
ケヴィン「平気だ。ここでの生活にもすっかり慣れた」
セシル「……」
セシル「なぁ、ケヴィン」
ケヴィン「ん?」
セシル「結婚しないとは言ったが、決してお前を軽んじているわけではない」
ケヴィン「……」
セシル「結婚は、俺たち二人だけの問題じゃない。俺と結婚するということは、ゴールド家の人間になるということだ」
セシル「子供の頃からこの家を見て来たお前なら、その意味がわかるだろう?」
ケヴィン「それでも、俺は……」
セシル「恋人のままでいれば、お前は自由でいられる。でも結婚してしまえば、逃げることもできなくなる」
ケヴィン「逃げるって……どこへ?」
ケヴィン「俺の居場所は、お前の隣だけだ」
セシル「ケヴィン……」
セシル「お前の気持ちは嬉しいが、この家に入って深く関わることになれば、いずれ逃げ出したくもなる」
セシル「実際、俺だって逃げ出したしな」
ケヴィン「……」
ケヴィン「不安なんだ」
セシル「え?」
ケヴィン「俺は、クリスのように仕事の話ができるわけではないし、ワイアットのようにゴールド家のことを知っているわけでもない」
ケヴィン「時々、自分の存在意義がわからなくなる」
ケヴィン「この家では、みんな俺に親切にしてくれるけど……そんな扱いを受ける資格なんて、ないんじゃないかって」
セシル「……お前がそんな風に思っていたなんて、知らなかった」
ケヴィン「セシルは恋人だし、親友だ。対等でいたいと思っている。でも……」
ケヴィン「お前はどんどん大きな存在になっていくのに、俺は何も変わらないままだ」
ケヴィン「このままだと、そのうちお前との仲も壊れそうで、たまらなく不安になる」
ケヴィン「セシルには、結婚なんてつまらない肩書き程度にしか思えないかも知れない。でも俺にとっては、唯一お前とのつながりを実感できる、大切な証なんだ」
セシル「……そういう考え方もあるんだな」
セシル「俺は、元々結婚に対して、良い印象を持っていなかった」
セシル「ゴールド家にとって結婚は『戦略の一つ』でしかないからな」
セシル「俺の母親は、親父と結婚しなかった。それでも、亡くなる直前までとても幸せそうだった。だから……」
セシル「結婚なんてしなくても、お前とは上手くやれると思っていたんだ。むしろ結婚なんてしない方が、俺たちの仲を良好に保てると思っていた」
セシル「でも……そうだな。結婚でお前が安心できるというなら、それも悪くないかも知れないな」
ケヴィン「セシル……」
ケヴィン「俺と結婚すれば、クロエとエマが正式にお前の娘になるぞ」
セシル「俺はもう、自分の娘だと思っている」
ケヴィン「そうだな」
セシル「結婚しても良いが、一つ問題がある」
ケヴィン「何だ?」
セシル「お前には、花婿修行を受けてもらう必要がある」
ケヴィン「花婿修行?」
セシル「普通は花嫁修行だけどな。ゴールド家の歴史やしきたり、マナーについて学ばなければならない」
セシル「ちなみに指導担当者は、ワイアットだ」
セシル「お前に耐えられるか?」
ケヴィン「……」
ケヴィン「……マリアにチェンジしてもらえないのか?」
セシル「ダメだ。ワイアットほどゴールド家のしきたりに精通している者はいないし、ゴールド家当主の伴侶になるには、執事長の承認を得なければならない」
セシル「これが、ゴールド家だ」
ケヴィン「……」
ケヴィン「……頑張ります」
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テディが階段を使う度に、ケガをしないか心配です。
やる気スイッチです。応援よろしくお願いしますm(__)m