不当な支配が、ゆっくりとこの屋敷を蝕んでゆくーー
ガチャン
レイチェル「ちょっと、ドレスが汚れたじゃない!何してるのよ!?」
マリア「申し訳ございません、奥様……」
ワイアット「失礼します。何事ですか?」
マリア「ワイアット……」
レイチェル「このメイドが私のドレスにお茶をこぼしたのよ!」
マリア「それは、奥様がテーブルを蹴られるから……」
レイチェル「言い訳するつもり!?」
ワイアット「奥様、マリアが粗相をしたようで申し訳ございません」
レイチェル「まったく、どういう教育してるのよ?」
ワイアット「マリア、下がれ。アレクシス様の寝室の掃除を頼む」
マリア「……かしこまりました」
マリア「失礼します」
レイチェル「……フンッ」
ワイアット「奥様、お怪我はございませんか?すぐにお召し物を用意させます」
レイチェル「いいわ、それよりあなた達……」
レイチェル「アレクシス、アレクシスって、いつまで消えた人間のことを口にするつもり?」
ワイアット「……アレクシス様は、ゴールド家の次期当主。
いつ戻って来られても不足がないように、皆、気を配っているのです」
レイチェル「次期当主ですって?……いい、ワイアット。よく聞きなさい」
レイチェル「ゴールド家の次期当主は、ジュリアンよ!
正妻であるこの私の息子にこそ、権利があるわ」
レイチェル「アレクシスなんて所詮、あの人と籍を入れることさえ許されなかった、田舎娘との子供じゃない」
ワイアット「レイチェル様!いくら奥様といえど、口が過ぎますよ」
レイチェル「なによ……」
ワイアット「私の役目は、このゴールド家の誇りを守ること。
それが、赦された立場にございます。
旦那様やアレクシス様を貶めるような発言は、お控えください」
レイチェル「執事ごときが、偉そうに……」
ワイアット「奥様」
ワイアット「ゴールド家の後継者は、旦那様の第一子であられるアレクシス様です。
これは、私の意見ではございません」
ワイアット「旦那様のご意思です」
レイチェル「フンッ……だからなんだっていうのよ」
レイチェル「あの人は先が長くないし、アレクシスは行方もわからない。
どの道、この家はジュリアンのものになる」
レイチェル「その時が来たら、真っ先にあんたをクビにしてやるわ」
レイチェル「覚えてなさい!」
ワイアット「……」
キース「まだわからないのか?」
ワイアット「……キース」
キース「姿を消した主に、忠誠を尽くす必要などない。
奥様の敵に回るよりも、味方でいる方が賢明だぞ」
ワイアット「私の主は、私が決める。余計な忠告は不要だ」
キース「賢く生きろよ、執事長殿」
キース「まぁ……俺としては、お前が消えてくれた方が都合が良いんだけどな」
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本人達のいないところで、派閥争い勃発。
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